「海洋天堂」を見に行きました(8月9日)
最初のシーンは小船に乗った父と子が足を縄で縛り、重りに縛りつけ一緒に海へ飛び込む。いったいどうなることかと思っていると、二人は家へ帰ってくる。この親子は水族館の電気・水道の設備技師のシンチョン(心誠)とその息子のターフー(大福)だった。ターフーは自閉症で自分ひとりでは生きて行けない。母親はターフーが7歳の時に死んでいる。シンチョンは自分が末期がんであることが分かり、ターフーを残して死ねないと考え、彼と無理心中をすることを決意したのだった。
ところがターフーは父について毎日水族館に行き、魚のプールで泳いでいたので泳ぎは得意だった。海に二人で飛び込んだときも自分で縄を解いて父も助け上げたのだった。シンチョンは自分が死ぬまでにターフーがちゃんと生きて行けるように、バスの乗り方、シャツの脱ぎ方、掃除の仕方などを教える。
ターフーの周りには彼を受け入れ、支えてくれる人たちがたくさんいた。隣家で雑貨屋を営んでいるチャイはシンチョンに心を寄せていて、ターフーの面倒もよく見ていた。
かつてお世話になった養護施設の校長リュウ先生は彼のために民間の施設を紹介してくれ、彼をそこへ入所させたが、夜になって騒ぎ出し、シンチョンが駆けつけ、シンチョン自身も一緒に住むことにした。そしてターフーに生きていくためにいろいろなことを教えるのだった。
水族館の館長もターフーに理解があり、彼を職場に連れて来て、彼が魚のプールで泳ぐことも認め、さらにシンチョンの死後も、彼を掃除夫として雇ってくれる。
またターフーは水族館にやってきたサーカス団のピエロリンリン(鈴鈴)と仲良くなるが、彼女は次の巡業地へと去っていった。
ターフーは自閉症で自分の世界で生きている。普通だったら彼一人では生きて行けない。それを周りの人たちが彼を支えていく。自閉症児の周りの人たちが試されているのではないかと思う。彼を支えて行けるだけのやさしさが周りに人にあるのかどうか。この映画では周りの人達がターフーを支えることになったが、現実の社会ではどうだろうか。困難に陥った人を支える愛がみんなの心にあるだろうか。そういうことを考えさせられる映画でした。
監督は「北京ヴァイオリン」の脚本家シュエ・シャオルー。自身の14年間渡る自閉症児施設でのボランティア活動から脚本を執筆。その脚本を読んで感動したジェット・リーがノーギャラで野出演を決意。息子を思う父親役を切々と演じました。
「海洋天堂」 中国2010年 98分 監督・脚本:シュエ・シャオルー
出演:ジェット・リー(李連杰)、ウェン・ジャン(文章)、グイ・ルンメイ他