「わが母の記」を見てきました(4月5日)

d0021786_23204286.jpg名古屋市公会堂へ「わが母の記」の試写会を見に行きました。

小説家の伊上洪作(役所広司)は、幼少期に兄妹の中でひとりだけ両親と離れて育てられたことから、母・八重子(樹木希林)に捨てられたという想いを抱きながら生きてきた。父(三国連太郎)が亡くなり、残された母の暮らしが問題となり、長男である伊上は、妻と琴子(宮崎あおい)ら3人の娘たち、そして妹たちに支えられ、ずっと距離をおいてきた母・八重と向き合うことになる。老いて次第に失われてゆく母の記憶。その中で唯一消されることのなかった、真実。初めて母の口からこぼれ落ちる、伝えられなかった想いが、50年の時を超え、母と子をつないでゆく──。

1959年
 ふと甦る、子供の頃の記憶。土砂降りの雨のなか、軒下に立っていた。向かい側には、不機嫌な顔をした母と、まだ幼い二人の妹がいる──。小説家の伊上洪作(役所広司)は、父の見舞いに訪れた湯ヶ島の両親の家で、物想いにふけっていた。「あれ、どこだっけ?」と妹たち志賀子(キムラ緑子)と桑子(南 果歩)に問えば、口々に答えが返ってくる。幼少期に伊上はひとりだけ両親と離れて育てられていた。「僕だけが捨てられたようなものだ」軽い口調で話す伊上だが、本当はその想いをずっと引きずっていた。
 東京に帰ると、妻の美津(赤間麻里子)、長女の郁子(ミムラ)、二女の紀子(菊池亜希子)が、伊上の新作小説にせっせと検印を捺している。ベストセラー作家の家族の大切な仕事なのに、三女の琴子(宮﨑あおい)の姿はない。自室にこもって夕食にも降りて来ない琴子に、不満を募らせる伊上。繊細な紀子は、その姿を見ているだけで、息が苦しくなる。だが、当の琴子は声を荒げる伊上に反抗的な態度で言い返す。そして深夜、持ち直したかに見えた父(三國連太郎)の訃報が入る。

1960年
 父亡き後、母・八重(樹木希林)をどうするかが問題となり、独身で身軽な桑子が面倒を見る。ある日、桑子に連れられて八重が伊上家を訪れ、伊上がとっくに送った弟の誕生祝いを、まだ送っていないと言い張る。父が亡くなる少し前から始まった物忘れが、どうやらますますひどくなったらしい。苛立つ伊上に八重は、「あの女に預けたのは一生の不覚だった」と言い出す。5歳から8年間、伊豆の山奥の土蔵で、伊上を育てた曾祖父の妾・おぬいのことだ。おぬいとの思い出を大切にしている伊上は、八重に強い眼差しをぶつける。だが、八重は視線を外して辻褄の合わないことを口にし、翌朝にはもう湯ヶ島に帰っていく。

1963年
 八重の誕生日に、川奈ホテルに集まる一族。志賀子の夫の明夫(小宮孝泰)や、運転手の瀬川(三浦貴大)、秘書の珠代(伊藤久美子)も参加しての盛大なお祝い会だ。八重は機嫌よく過ごしていたが、さらに記憶は薄れていた。夫との思い出をほとんど失くしている姿に、伊上と妹たちは少なからぬショックを受ける。自分を捨てた母を許してはいないけれど、その記憶を失くされたらケンカにもならない──嫌味のつもりで言った自分の言葉に胸をつまらせる伊上。気を紛らわせようと、娘たちとビリヤードを始める伊上は、まもなく結婚する郁子に「これが最後の家族旅行」と言われて、さらにしんみりしてしまう。

1966年
郁子が赤ん坊を抱いて里帰りした日、湯ヶ島は大騒ぎになっていた。今は志賀子夫婦が八重と同居しているのだが、交通事故に遭って家で療養している明夫を「働かないならご飯をあげない」と罵倒するというのだ。
 しばらく伊上が引きとることになるが、八重を冗談のタネにする家族に、琴子が突然怒り出す。「みんなおばあちゃんの気持ちになってないから、おばあちゃんの心をこじらせてしまうのよ」。さらに話は伊上の子育て批判に発展、紀子までもが初めて父に反抗する。日頃から家族を小説やエッセイのネタにする父への不満が、一気に爆発したのだ。
 八重は琴子の提案で、軽井沢の別荘で暮らすことになる。琴子と瀬川、手伝いの貞代(真野恵里菜)の3人で面倒を見るが、八重の天真爛漫な言動に振り回されながらも、どこか楽しくもあった。

1969年
 おぬいの五十回忌の法要で、顔を合わせる一族。琴子はプロの写真家になり、運転手を辞めさせた瀬川と付き合っている。紀子はハワイへの留学を父に許される。八重は夜に徘徊するようになり、もう誰が誰かも分からなくなっていたが、家族は八重が元気なだけで満足だった。
 ある朝、おぬいに息子を奪われたという八重の言葉に感情を抑えられなくなった伊上は、初めて母と対決しようと「息子さんを郷里に置き去りにしたんですよね」と問いつめる。だが、八重の口からこぼれたのは、伊上が想像もしなかったある〈想い〉だった。こらえきれず、母の前で嗚咽する伊上。
 母との確執を乗り越え、晴れ晴れとした気持ちで紀子を送るハワイ行きの船に乗りこむ伊上。だが、伊上のもとに八重がいなくなったという知らせが届く──。

母・八重は今で言う「認知症」で自分の子どものこともわからなくなっていく。そして夜中におきだして家の中をうろうろしたり、外へ出て徘徊したりと問題行動を起こす母親だったが、彼女は息子が小学生の時に書いた詩をずっと持っており、それを覚えて口ずさむのだった。また、どうして家族の中で彼だけが両親に育てられずに祖父の妾のおぬいに育てられたのかという秘密が明らかになり、彼は母の本当の気持を知るのだった。

原作は、昭和を代表する文豪・井上靖が、自身の人生、家族との実話をもとに綴った自伝的小説「わが母の記~花の下・月の光・雪の面~」。

「わが母の記」 2012年日本 118分 監督:原田眞人 出演:役所広司、樹木希林、宮崎あおい他
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by irkutsk | 2012-04-05 23:20 | 映画 | Comments(0)