「東京家族」を見に行きました(2月5日)
2012年5月、瀬戸内海の小島で暮らす平山周吉(橋爪功)と妻のとみこ(吉行和子)は子どもたちに会うために東京へやってきた。郊外で開業医を営む長男幸一(西村雅彦)の家に、美容院を営む長女の滋子、舞台芸術の仕事をしている次男の昌次(妻夫木聡)が集まり、すき焼きを囲む。最初はお互いを思いやるが、都会で生きる子ども達とでは生活のリズムが違いすぎて少しずつ溝ができていく。
日曜日にお台場、横浜を案内しようと準備していたが、突然患者から電話が入り、往診に行くことになる。とみこはは拗ねる孫の勇を連れて公園へ行くが、まだ9歳なのに将来を諦めている孫の言葉にため息をつく。
周吉ととみこは長女の滋子のところへ行くが、忙しくて両親をどこへも案内できない。慈子に頼まれて次男の昌次は二人を観光バスに乗せ、自分は徹夜明けで居眠りをしていた。滋子の元に戻ると忙しくて相手もできないからと横浜の高級ホテルに泊まってもらうように手配していた。
ふたりはベイブリッジの見えるホテルに泊まるが、何もすることがなく、1日で戻ってきてしまう。ところが滋子に今夜は商店街の飲み会が自宅であるから今夜はいてもらっては困ると言われる。とみこは昌次のところへ行くといい、周吉は同郷の友人沼田と会い、彼の息子は大きな会社の部長をやっているから泊めてもらうと行って出かけるが、部長というのは嘘で、係長で、友達を連れて帰ると嫁がいい顔をしないと断られる。
とみこは昌次のアパートで思いがけない人を紹介される。3・11の津波の後片付けのボランティアで知り合った間宮紀子を紹介される。とみこは明るい笑顔の紀子がすっかり気に入る。翌朝、紀子は出勤前に朝ごはんを届けてくれる。そして、とみこはもしもの時に使ってくれとお金を紀子に預ける。
一方周吉は泥酔して滋子のところへ帰ってくるが、店をめちゃくちゃにして、滋子と喧嘩して幸一のところへ帰ってくる。昌次のところからニコニコ顔で帰ってきたとみこは2階へ上がろうとして階段の踊り場で倒れてしまう。病院に運ばれるがそのまま息を引き取ってしまう。
東京でお骨にし、しまへ戻って葬式をしたが、長男、長女は葬式が終わると早々に帰っていった。昌次と恋人の紀子だけが3~4日残って父親の面倒を見る。そんな二人も帰って行き、隣のユキちゃん一家が周吉の面倒を見てくれる。
「遠くの親戚より近くの他人」という現実がよく描かれていた。日本はどこかで間違ってしまったと泥酔した周吉が言っていたが、確かにそのとおりだ。ロシアやフィリピン、インドネシアではかつての日本にもあった年寄りを大切にする風潮や隣近所がお互いに助け合う習慣が今も残っている。日本は経済発展とともに大切なものを失っていったような気がする。
映画では蒼井優演じる紀子が光っていた。とみこにも気に入られ、周吉にも気に入られ、とみこの形見の時計をもらう。しかし、私もここは窮屈で、来たことを後悔していると正直に打ち明け、それがまた周吉に気に入られるのだった。
「東京家族」 2012年日本 146分 監督:山田洋次 出演:橋爪功、吉行和子、西村雅彦、中嶋朋子、妻夫木聡、蒼井優ほか