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「ストーリー・セラー」を読みました(2月5日)

「ストーリー・セラー」を読みました(2月5日)_d0021786_1132547.jpg妻の病名は、致死性能劣化症候群。複雑な思考をすればするほど脳が劣化し、やがて死に至る不治の病。生きたければ作家という仕事をやめるしかない。医師に宣告された夫は妻に言った。「どんなひどいことになっても俺がいる。だから家に帰ろう」。妻は小説を書かない人生を選べるのか。極限に追い詰められた夫婦を描く、心震えるストーリー。

本書は二つのストーリーからなっていて、最初のストーリーは作家の妻が思考に脳を使えば使うほど生命を維持するために必要な脳の領域が劣化していくという世界にただ一人の病人になるという話です。彼女は小説家として書き続けるのか、それとも筆を置き、考えない生活をするのか。

話は彼女が趣味で書きつづっていた小説をひょんなことから読むことになり、その作品に感動し、彼女の最初の読者であり、彼女を小説家として押し出すことになる会社の同僚である彼氏との話から始まる。二人は結婚し、彼女の作家生活も順風満帆かに見えた。しかし、大学時代の文芸部で彼女の作品をぼろくそに言って彼女のトラウマとなっていた元カレが、成功した彼女を妬んで、誹謗中傷の文を雑誌に掲載した。そんなこともあり彼女はうつ状態になり、さらにまだらボケ状態の祖母を実家の家族が面倒を見ず、ひとり暮らしの祖母の家はごみ屋敷で糞尿垂れ流し状態になっており、近所からも苦情が出ていた。彼女の母親が時々祖母を見に行くだけで、一人では手に負えなかった。父親は面倒ごとには背を向けて何もしようとはしなかった。そして彼女は夫と二人で祖母を施設へ入れようと祖母の家へ行き、祖母を送り出し、片づけを済ませてうちへ帰って来た。しかし、彼女の様子がおかしくなり救急車で病院へ運ばれた。その結果が上記のような診断だった。

前作は妻が死ぬという話だったから、次はその夫が死ぬという話にしてみたらと夫に言われ、その話を書くことに。

同じ会社で働く二人。彼が、自分が書いた小説を読んで泣いていたのをひょんなことから目撃し、二人の仲は急接近し、結婚する。そして彼女は専業作家になり、彼が家事一切を仕事のかたわら担当するという生活が続いていた。そんなある日、彼が交通事故に会ったという連絡が入る。ケガは大腿骨骨折で命に別状はなかったが、検査で膵臓に腫瘍が見つかったという。

二つの話とも夫婦の暖かい思いやりがあふれていて、ほろりとさせられる内容でした。

「ストーリー・セラー」 有川浩著 幻冬舎文庫 2015年12月5日発行 540円+税
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by irkutsk | 2016-02-05 23:02 | | Comments(0)