「井戸謙一弁護士の講演会」に行ってきました(8月28日)
井戸謙一弁護士は2006年金沢地裁で、北陸電力志賀原発2号機の運転差し止めを認める判決を出した裁判長です。2011年に退官された後は、滋賀県彦根市で弁護士になりました。そして、2016年3月、福井県の高浜原発3,4号機の再稼働差し止め裁判で勝利し、史上初めて現実に動いている原発を止めました。
赤旗(2016年3月20日)インタビュー記事で井戸さんは次のように語っています。
「電力会社がしゃかりきに原発を動かそうとするのは別に『公益・公共』のためではなく、自分たちの経営の安定のためなのです。福島第一原発の1~3号機の原子炉の状態も分かっておらず、事故の原因もよくわからない。いまなお約10万人の人びとが県外で避難生活を続け、震災関連死は2000人を超えました。一私企業の経営のために膨大な人たちを不幸のどん底に突き落とし、さらに次の過酷事故を起こして国家を崩壊させてしまうことが許されるのでしょうか」
井戸弁護士は講演で、2011年の福島第一原発事故はいくつかの奇跡的な偶然によって最悪の事態を避けることができたが、次に事故が起こったときもこのような偶然が起こるとは考えられない。次に事故が起こったら、日本は壊滅状態になると述べていました。
福島原発の事故で放射能の大半は海の方へ流れて行った。もし美浜や高浜で事故が起こったら福島以上の放射能汚染の事態を招く。
福島原発事故で、市民は原発過酷事故の恐怖体験をし、原発安全神話、専門家信頼神話、原発必要神話、原発低コスト神話が崩壊した。
新規制基準に則って原発再稼働が進められているが、新規制基準は世界最高水準ではなく、立地審査を放棄し、避難計画を審査しない、耐震基準は従前通り、EU仕様(二重格納容器、人の行動に期待しないパッシブ設計)にも及ばないものです。
低コスト神話についても原子力は洋上風力や太陽光よりは安いが、天然ガス、陸上風力、水力、地熱などと比べても高いものになっており、事故後の処理費用や補償などを考えるととても安いと言えるものではありません。また原発を動かさなくても電力は十分にまかなえています。
福島原発事故後の子どもたちの被曝についても、井戸弁護士は「子ども脱被ばく裁判」の弁護も行っており、事故後5年経過し、甲状腺がんなどの放射能によるものと思われる病気が出てきているが、政府は放射能との因果関係を認めようとしないし、今後その因果関係がわからなくなるような制度改悪をしようとしているということでした。
そして最後に、次のように述べました。
・核は、種の保存すら危うくさせる
・放射能安全神話と闘おう
・原発に未来はない。退場の道筋をつけてあげるのが市民の役割。一つ一つの原発の再稼働に徹底的に反対しよう。仮に再稼働を防ぎえなかったとしても、可能な限り遅らせよう。
・そのことによって、電力会社は、安全対策にカネをつぎ込まざるを得なくなる。運転できないリスクが高まる。原発がペイしないことが明らかになれば、撤退に道を開く。
その後、「高浜原発40年廃炉名古屋訴訟」の弁護団の藤川誠二弁護士から、この裁判についての報告がなされました。次の公判は10月26日(水)午前10時半から名古屋地裁で行われます。傍聴券の抽選が10時から行われます。ぜひ傍聴にお出かけください。