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「生命の内と外」を読みました(4月6日)

「生命の内と外」を読みました(4月6日)_d0021786_1054244.jpg「はじめに」で著者は次のように言っている。「自分という存在は、どこまでが自分なのかと考えると、少し事情は複雑になるだろう。一枚の皮膚に囲われた内部が自分である。生物学的に言うとそのように言えそうだが、実は私たちの自己の内部には他者をも棲まわせている。単に哲学的な思考の枠組みではなく、生物としての私たちの生命の内側には、他の生命が棲み着いているのである。」

「生命の誕生に際して、細胞(生命)が膜によって区画されたとき、細胞は同時に決定的な自己矛盾を抱え込むことになってしまった。膜によって外界と隔てられなければ生命としては存在できないが、いっぽうで、外界と完全に隔離されてしまえば、これまた生命としての活動を営むことはできないのである。」

「生命が生命であるためには、代謝活動が必須である。」「つまり生命は外部に対して「閉じつつ、開いて」いなければならないのである」。

また、「生命の本質として「変わりつつ、変わらない」という性質も極めて大切なものである。外の変化にやわらかく対応し、それをやり過ごしつつ、己はしっかりと維持していく」。

第一部第1章では口から肛門までを内なる外部・消化管ととらえ、「口から取り込まれた食物はどの段階でヒトの内部に入ったと言えるのか」と問題を提起し、「食物に含まれる様々な栄養素は消化管を通り抜けていくあいだに、何度も分解を受けながら、やがて腸管から吸収されていく。この「吸収」という過程があって初めて食物摂取は意味を持つのである。ここでいう栄養素の吸収というプロセスこそが、まさに外部から内部への物質の移行なのである」と言っている。

第2章では生命が生命であるための最低限の条件を次のようにあげている。
1、外界から区別された単位であること
2、自己複製し、子孫を残せること
3、代謝活動を行っていること

他にもたんぱく質の合成がどのように行われるのか、恒常性の維持は生命活動の最大のミッションであること、細胞内のリサイクリングシステムなど興味深い内容がたくさん書かれている。やや難しいところもあったが、そこは無視して読み飛ばした。

私たちの体の精巧な仕組みについて驚き、その合理性に感動すら覚える。私たちの体内で起こっているさまざまな活動が、人間社会で起こっている活動となんとなくオーバーラップするのは、自然なことなのだろうか。

「生命の内と外」 永田和宏著 新潮社 2017年1月25日発行 1300円+税
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by irkutsk | 2017-04-06 15:52 | | Comments(0)