「アイネクライネナハトムジーク」を読みました(10月3日)

d0021786_9243148.jpg6つの短編が時空を超えてつなぎ合わされて一つの小説になっている。
「アイネクライネ」では日本人ボクサーがヘビー級のタイトルマッチをやる日、街角でアンケート調査をしている佐藤の描写から始まる。佐藤の勤める会社の先輩社員・藤間が妻に逃げられパニックを起こしサーバーを壊してしまったためである。

佐藤は大学時代の友人・織田一真のマンションに遊びに行く。織田の妻・由美は大学時代同級生の間で評判の美人だった。6歳の娘(美緒)と1歳3か月の息子がいる。

「ライトヘビー」では美容院に勤める美奈子の客・板橋香澄に弟・学と電話で話し相手になってほしいと頼まれる。断ったが、ある日その弟から電話がかかってきて、その後電話友達になる。香澄の家でヘビー級タイトルマッチを観戦することになるが、リング上で戦っていたのが弟だと告げられる。

「ドクメンタ」は藤間が運転免許の更新に行き、知らない女にメガネを貸してくれと頼まれる話。二人とも免許更新期限の最終日に来ていたのだった。お互いの配偶者にそのいい加減さを指摘されていたがなかなか直らない二人だった。

「ルックスライト」はファミレスの店員・笹塚朱美がお客にいちゃもんをつけられているのを他の客・久留米邦彦が助けてやる。その時のセリフは「こちらの方がどなたの娘さんかご存知の上で、そういう風に言っていらっしゃるんですか? あの人の娘さんに、そんなに強く言うなんて、命知らずだなと思いまして」というものだった。そして二人は付き合うようになるが、結果としては別れることに。

高校生の久留米の息子・和人はクラスメイトの織田美緒に「市営自転車置き場で駐輪場代を支払ったというシールを誰かにはがされた。犯人を捕まえるために協力して」と頼まれ、駐輪場へ。ラベルをはがしていた男を発見し、美緒は注意するが、男は居直る。そこへ英語の教師・深堀先生が現れ、その男に「こちらがどなたのお嬢さんかご存じで喋っていらっしゃるんですか? そんな口調で怒っているだなんて、ずいぶん命知らずだなと思って」と言うと男は退散する。そこに久留米和人の父が現れる。深堀先生の旧姓は笹塚だった。

「メイクアップ」は、高校時代にいじめを受けた結衣は大手化粧品会社で働いていた。そこに広告会社の社員としてプレゼンに現れたのは、高校時代、結衣をいじめた中心人物・小久保亜季だった。結衣は、高校時代は太っていたが、今はやせていて、亜季は結衣がクラスメイトだったのに気づいていなかった。結衣の同僚は復讐のチャンスだというが、結衣は亜季の性格が今でも変わっていないことを確認したが、復讐はしなかった。

「ナハトムジーク」は世界ヘビー級のチャンピョンになり、すぐ後のリターンマッチで敗北した小野が、10年後再びヘビー級チャンピョンに挑戦するが敗れる。最終ラウンドのゴングが鳴った後のパンチで相手は倒れたが、無効でタイトルは取れなかった。

時間が一気に飛び、幼児だった女の子が高校生になり、ファミレスで助けた店員が息子の英語教師になっていたり、時間と空間があちこちに飛び、人物整理をしながら読まないと分からなくなってしまいそうな小説だった。でも、その登場人物が世代を超えて、つながっていくのがおもしろかった。

「アイネクライネナハトムジーク」 伊坂幸太郎著 幻冬舎文庫 2017年8月5日発行 600円+税
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by irkutsk | 2017-10-03 09:22 | | Comments(0)