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カテゴリ:本( 359 )

「カラダはすごい!」を読みました(7月11日)

d0021786_1534132.jpg医者である著者が、いろんな疑問、思い込みを明らかにしてくれる一冊である。しかし、新書一冊というのには限度があり、もうちょっとこの話を聞きたいと思わせられる部分が多々あった。一般の読者にもわかりやすいように書かれており、ちょっと楽しい本でした。

本書は9つの講義に分かれており、それぞれのテーマでおもしろい話、みんな信じているけど、本当じゃない話などなどたくさん発見がありました。
第1講 実は医学はおもしろい――ウソがいっぱいの医学の不思議
第2講 呼吸器系――息をしすぎて苦しくなる肺の不思議
第3講 消化器系――なんでもクソミソにする胃腸の不思議
第4講 循環器系――誰かが動かす心臓の不思議
第5講 神経系――魂は宿っていない脳の不思議
第6講 泌尿器系・生殖器系――医学が下ネタになる不思議
第7講 感覚器系――他人と比べられない感覚の不思議
第8講 内分泌系・リンパ系――ごく微量で効くホルモンの不思議
第9講 皮膚・骨・筋系――骨が入れ替わる不思議

お酒を飲むとどうしてトイレに行きたくなるか?
アルコールには利尿作用はありません。あるのは「抗利尿ホルモン」の分泌を抑える働きです。抗利尿ホルモンとは尿が出ないようにするホルモンで、脱水を防ぐためにあるそうです。では、なぜアルコールを飲むと抗利尿ホルモンが抑えられるのでしょうか。それはやはりアルコールが体に良くないから、早く体外に排出するために、身体はどんどん尿を出させるのです。だからお酒を飲むとのどが渇いて、水を飲みたくなるんですね。

ダイエットについておもしろいことが書かれていました。
胃の容積は空腹時で50~100ml、満腹状態では1500~1800mlになります。胃の壁は柔らかいので、圧力がかかると伸びます。いつも満腹まで食べていると、胃が伸びて、さらに食べないと満腹感が得られなくなります。それでまた食べるとまた胃が伸びるという悪循環に陥ります。これが大食の人のパターン。逆にいつも腹八分目にしておくと、胃は少しずつ縮み、小さくなるから少しで満腹に近くなり、食べる量が減るからさらに胃が小さくなる。これが小食の人のパターンです。どちらに傾くかは、初めにほんのわずかな我慢ができるかどうかにかかっています。

鼻血は鼻をつまめば止まる。
鼻の穴のすぐ上には、毛細血管が豊富な場所(キーゼルバッハ部位)があり、鼻血はたいていここから出ます。5分から10分ここをつまんで、そっと離すと止まっています。ちり紙を詰めたり、うなじをたたく人もいますが、これは全く効果がありません。

舌のコケは取ってはいけない。
健康な舌には白から淡黄色の薄い苔がついていますが、胃腸の調子が悪くなるとコケが分厚くなり、色も濃くなります。これは舌の表面を覆って味覚を低下させ、ものを美味しく感じにくくするためです。舌が胃を気づかって、あまり食べないようにとサインを送っているのです。

牛乳は骨粗しょう症の予防にならない。
牛乳にはカルシウムが多く含まれるので、骨粗しょう症の予防になると考えている人も多いでしょう。しかし、それは間違いです。牛乳を飲んで血液のカルシウム濃度が急激に上がると、逆に排泄が進みすぎ、それを補うために、骨のカルシウムが溶けて、血液に流れ込むからです。カルシウムは心臓や脳、筋肉の活動に重要な働きをするため、身体が一定の濃度に保とうとして、過剰反応が起きてしまうのです。望ましいカルシウムの摂取は、野菜や小魚から適量をとることです。すなわち、バランスのとれた普通の食事が一番ということです。

「カラダはすごい!」 久坂部羊著 扶桑社新書240 2017年5月1日発行 820円+税
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by irkutsk | 2017-07-11 05:02 | | Comments(0)

「会いたかった人」を読みました(7月7日)

d0021786_9433259.jpg表題作「会いたかった人」をはじめ「結婚式の客」、「寄生虫」、「木陰の墓」、「運の問題」、「甘いキスの果て」を含む短編サスペンスを収めた一冊。

「会いたかった人」では心理学者の諸井小夜子が、4年前に都内で老人ばかりを誘拐し、残忍な手口で殺害する連続殺人事件が起きた時、犯罪心理学を応用して事件を考察する短い論文を書いた。それから数日後、逮捕された犯人が、かのじょの予測した人間像と偶然、ぴったりと一致したことから、彼女は一躍、時の人となった。

そして関東地方にだけ放送されている人気トーク番組「午後のコーヒーブレイク」に出演し、その中で思い出に残っている友達について聞かれ、中学時代仲の良かった結城良美のことを話した。彼女は高校に入った年にお父さんの転勤で新潟に行き、2年くらいは文通を続けていたが、その後音沙汰がなくなったと話した。するとその日の夜、番組のプロデューサーから電話が入り、結城良美が見つかったという。そして彼女の電話番号を教えてくれた。

25年ぶりの親友に電話をかけ、高校3年の時彼女の父親が交通事故で亡くなり、岡山の母の実家へ引っ越したのだという。二人は翌日、渋谷のイタリアンレストランで会うことにした。25年ぶりに再会した彼女は小夜子の想像を超えていた。昔話をし、お互いの近況を話した。その後も良美は頻繁に電話をかけてきた。

そしてしばらくして先日出演した番組のプロデューサーから次のような話を聞いた。「丹野さんという人から番組あてに手紙が届いて、その手紙によると結城良美さんは25才で亡くなっているはずだ…」という。

では再会した良美は誰なのか?

ほかの5遍もハラハラ、ドキドキするストーリー展開で十分楽しめました。

「会いたかった人」 小池真理子著 祥伝社文庫 1991年10月20日発行 600円+税
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by irkutsk | 2017-07-07 09:43 | | Comments(0)

「ナミヤ雑貨店の奇跡」を読みました(7月2日)

d0021786_5513570.jpg悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されたのか? 3人は戸惑いながらも当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くが……。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に奇跡を起こせるか。

第1章では1980年オリンピック代表選手を目指す月のウサギさんからの相談。そこには次のように書かれていた。「私には愛する男性がいます。彼は私の最大の理解者であり、協力者であり、応援者です。私がオリンピックに出ることを心の底から望んでいます。ところが突然彼が倒れて、彼の病名を聞き目の前が真っ暗になりました。癌でした」。彼のそばにいてあげるべきか、でも彼は彼女がリンピック代表選手になること、そのために練習に励むことを強く望んでいる。どうしたらいいかという相談でした。

相談の二つ目は魚屋アーティストさんからのもので、家業である魚屋を継ぐことよりも音楽の道へ進みたいという若者の相談でした。ある年のクリスマスイブの日、「養護施設「丸光園」へ慰問公演に行き、彼が作った曲「再生」を聞いて、すぐに覚えた女の子セリと出会いました。彼女は将来この「再生」を歌って有名な歌手になりました。

グリンリバーさんからの相談は、妊娠したが相手の人は妻子ある人でという。この人は前に一度結婚して、どうしても子供ができないので病院で診てもらったら、子供ができにくい体質だと分かった。だから今回は最後のチャンスらしい。

ほかにもたくさんの相談があり、自分が回答した結果をナミヤ雑貨店の店主・浪矢雄治は知りたくて、自分の33回忌の日、夜12時から夜明けまでナミヤ雑貨店の相談窓口が復活するので、相談をした人がその後どうなったか知らせてほしいというお知らせを何らかの方法で出してほしいと息子に頼む。そして彼の最後の日、ナミヤ雑貨店に一人にしてくれと息子に頼む。そして雄治は33年後からのお礼の手紙を受け取って読むことになった。

ナミヤ雑貨店店主の浪矢雄治が回答したものと、2012年深夜、このあばら家に逃げ込んだ3人の若者が書いた悩み事相談の答えがある。非常に面白い構成・内容の小説だった。映画化され9月23日に公開される。

「ナミヤ雑貨店の奇跡」 東野圭吾著 角川文庫 2014年11月25日発行 680円+税
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by irkutsk | 2017-07-02 05:51 | | Comments(0)

「存在の美しい哀しみ」を読みました(6月14日)

d0021786_55383.jpg死の床に臥した母から異父兄の存在を知らされた榛名は、母が亡くなったのを機に、兄の住むプラハに向かった。榛名は妹であることを隠し、ガイドとして兄を雇って、初めての対面を果たす。榛名、母・奈緒子、母・奈緒子と介護老人ホームの職員との話、榛名の父にあこがれる会社の若いOL、榛名の異父兄・聡の新しい母の物語、そして最後はプラハであった榛名のことが気にかかり、ウィーンまで彼女を追いかけて行く。そして榛名は二人が奈緒子から生まれた兄妹であることを告げる。

一つ一つの話が、短編のようで完結しているのだが、それは大きなストーリーを構成しているジグソーパズルのような関係で、全部を読み終えて登場する一人一人の人間の生きざまが見えてくる。

榛名の母・奈緒子が聡の父・芹沢喬と21歳の時に知り合ったのが、すべての物語のスタートだった。当時奈緒子は私大の文学部生で、喬は音楽大学でチェロを専攻していた。奈緒子は友人に誘われて音大の文化祭に行き、そこで喬と知り合う。長身でたくましい身体つきをしているわりには、顔に繊細さとあどけなさが目立つ男だった。喬の父親は財閥の流れを汲むグループ企業の取締役。母親の一族には芸術家が多く、喬もチェロの才能に恵まれ、将来を嘱望されているということだった。

大学を卒業したら、二人でウィーンに新婚旅行に行き、プラハに留学する。子どもは日本に帰って落ち着いてから作ればいいと言っていた。しかしプラハ行きが決まり、その準備をしている最中に、思いがけず奈緒子の妊娠がわかる。結局つわりがひどかった奈緒子は日本に残り、喬一人がプラハへ行くことになった。奈緒子は喬の両親と3人で暮らしていたが、子供を産んだ後で、この家を出ることを決心していた。

そんな折、前の勤め先の同僚から結婚披露宴の案内状が届き、出席することに。そこで3歳年上の後藤信彦と同じテーブルの隣同士になった。在職中から顔を合わせれば冗談を言い合う間柄だった。ここでの出会いをきっかけに、急速に後藤と親しくなり、やがて聡の出産後、今度は後藤の子どもを身ごもることになるのだった。そしてそのことが発覚し、聡は芹沢にとられ、離婚され、後藤と再婚。そして後藤の子・榛名を産んだのだった。

人生、何がきっかけになってその人の人生を大きく変えるのかわからない。

「存在の美しい哀しみ」 小池真理子著 文春文庫 2013年2月10日 495円+税
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by irkutsk | 2017-06-14 05:51 | | Comments(0)

「テレビじゃ言えない」を読みました(6月3日)

d0021786_1113670.jpg最近テレビじゃ「本当に言いたいこと」が何も言えなくてイライラしてるんだというビートたけしのつぶやきからこの本は生まれた。

一部を抜粋すると次のようなことが面白く書かれている。
ニッポンは「一億総活躍社会」どころか「一億総自主規制社会」だ。国に「お前ら活躍しろよ」って言われて「ハイ、わかりました!頑張ります!」って納得しちゃうバカがどれだけいるんだろう。国が国民に「頑張れ」って強いるのは、よくよく考えりゃ「働いて税収増やせ」「社会保障に頼るな」って言われているのとほとんど同じだろ。オイラはそもそも、この頃のニッポンは「一億総自主規制社会」だと思ってる。最近は犯罪行為をやったわけでもないのにタレントがスキャンダルで叩かれて、世間から「一発退場」になってしまう。ベッキーも「超」がつく人気者だったのにテレビから一瞬にして姿を消してしまった。ショーンKもテンプル大学卒業、ハーバードでMBA取得といったプロフィールがほとんど嘘とバレて、出演番組をすべて失ってしまった。別に「ベッキーはタレントとして優秀だから、どんな批判があっても出演してもらいたい」とか「ショーンKはコメンテーターとして有能だから経歴が違おうが問題ない。大事なのはコメント能力だ」って続投させるテレビ局があったっていいと思うんだけどな。その方が仁義のある、誠実なテレビ局だって考えはないんだろうか。

見出しだけを並べてみても、彼の考えの一端がうかがえて面白い。
例えば『「ネットで調べれば何でもわかる」と考えるヤツは、「そこに書かれていないもっと深い世界」に思いが至らない』。そこには「スマホの通信料っているのは現代社会における「年貢」みたいなものじゃないか」とか、「どうも最近は『作られたブーム』に踊らされてるヤツが多い」(ハロウィンやポケモンGOやアニメの聖地巡礼などなど)。「どんなブームも『儲けたい大人』の意図が少なからずあるもんだけど、そこを気にしたり、反発する人間が少ない」、「18歳選挙権ってものも権力にとってものすごく利用しやすい好都合なものかもしれない。深く考えず、雰囲気だけでブームに踊らされるってのは、よくよく考えりゃ怖いってことに気がついたほういい」、「実際は知識がなくて浅はかだから、選挙権をやっておけばこっちの思うとおりに操れるぐらいに思われて、都合のいい票田とみなされたんだよ」

賞味期限についても、消費者のためにあるんじゃなくて、経済を回すためにあるんじゃないかと言っている。まだ食えるのに、賞味期限を過ぎると捨ててしまうという家庭も多いのではないか。また最近格安〇〇というのがよくあるが、安いのにはそれなりに理由がある。「安いものには気をつけろ」と彼は思っているという。

面白い本でした。この本に書かれていることがテレビで言えたら、日本人はもう少し賢くなったかもしれない。最近のテレビは自主規制と、ばかばかしいクイズ番組と、スポーツと、警察ドラマが幅を利かせ、まさに一億総白痴化のための手段と化している感が否めない。ネットとテレビを押さえておけば、国民を支配するのは容易いのかもしれない。

「テレビじゃ言えない」 ビートたけし著 小学館新書 2017年2月6日発行 740円+税
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by irkutsk | 2017-06-03 11:01 | | Comments(2)

「ビコーズ」を読みました(5月26日)

d0021786_13385054.jpg舞台は長崎県西海市。叔母に「あんたはいつも片目を閉じてるから駄目なのよ」、「片目を閉じてるから、世の中の半分しかまともに見えてないんだよ」と言われた。

小学校3年の時、左の眼が突然見えなくなってしまった。でもうちに帰ると祖父が亡くなっていた。目の異常を誰にも言えぬまま、目は2日ほどですっかり回復した。そしてそれ以後も時々左の眼が見えなくなり、2、3日後には、元のように戻るのだった。

新人賞を受賞したぼくは、その後短編は書いたがぱっとせず、長編第二作目を編集者に催促されるがちっとも書けない。そんな僕は由紀子というスナックで働く彼女と住んでいる。気立てのいい彼女についつい皮肉を言ったり、彼女のすることにケチをつけて自分の憂さ晴らしをし、由紀子を傷つけるが、そのことに全く気付いていない。

そんな時、寺井から電話がかかってきて、向かいの喫茶店で待っているという。寺井とは10年前、一人の女性・映子をめぐって三角関係になり、ぼくの子供を宿した映子を道連れにぼくは心中しようとした。だが心中は失敗に終わり、二人とも生き残った。映子は彼のもとから姿を消し、どこにいるかわからなかった。そのことがずっと気になっていた。しかし、寺井の彼女のことを聞きたくないのかという問いに「聞きたくない」と答える。そして、あのことはもう終わったことだと僕は言うが、寺井は「終わってないから、おれたちはこうして会っているんじゃないのか」と追及する。

結局、ぼくは映子とのことを自分の中で何も決着をつけていないことに気づき、彼女の居場所を探し始める。そして、ようやく彼女の居場所を突き止め会いに行くのだが…。

かなり身勝手なぼくの存在に、嫌気がさしてきました。自分の周りの人間に対する気遣いがあまりにもなさすぎ。自分のやりたいこと、言いたいことをただやるだけという幼児性が抜けない、大人になれないぼくの存在。そして彼を取り巻く人たちのやさしさ。それが唯一の救いであった。

「ビコーズ」 佐藤正午著 光文社文庫 1988年5月20日発行 420円
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by irkutsk | 2017-05-26 13:39 | | Comments(0)

「たそがれどきに見つけたもの」を読みました(5月23日)

d0021786_10494524.jpg「たそがれどきに見つけたもの」をはじめ「その日、その夜」、「末成り」、「ホール・ニュー・ワールド」、「王子と温泉」、「さようなら、妻」が含まれている短編集です。

「たそがれどきに見つけたもの」はフェイスブックで高校生のクラスメイト伊智子と久しぶりにコンタクトをとることになり、彼女に会うことになった朱美の物語。かつて高校生時代、彼女は卯月君が好きだったのだが、現在の夫・多田君にラブレターをもらったことから、彼と付き合い始め彼と結婚した。可愛い娘も授かったが、1歳になる前に死んでしまった。久しぶりに会った伊智子の話によると、彼女は多田君が好きだったらしい。朱美は自分もまだ卯月君に会ってみたいという思いがあり、伊智子もやはり今でも多田君のことが好きなんだろうかと思ってしまう。

「その日、その夜」の舞台は12月21日、冬至の日。きむ子はかぼちゃのいとこ煮をつくるつもりで買い物に出かけた。きむ子は小説家である。本名は木村多賀子。名前をもじって苗字にし、高橋きむ子とペンネームをつけた。35歳で初めて単行本を上梓した。賞をもらい年収が大台に乗ったところで、東京でひとり暮らしを始めた。40歳だった。だが勢いがよかったのはわずか2,3年。その後は収入もなみの会社員クラスに落ち着き、きむ子の気持ちも仕事があるだけありがたいというところに落ち着いた。そしてこの日、きむ子は作ったかぼちゃのいとこ煮を食べることなく持病の心筋梗塞でひとり亡くなったのだった。

「末成り」はフルパートタイムで働く五十代組ふたり、四十代組ふたり、三十代と二十代の若手組ふたりの話なのだが、40代のゼンコ姐さん(本名・内田善子)は真偽も疑わしい過去の色恋沙汰の話でみんなを盛り上げていた。

「ホール・ニュー・ワールド」はコンビニでアルバイトとして働く53歳の智子が深夜勤務をやるようになり、朴青年と二人で休憩することに。そして、だんだんと若い朴君に気持ちが引き寄せられる智子の心の内が描かれている。

「たそがれどきに見つけたもの」 朝倉かすみ著 講談社 2016年2月22日発行 1500円+税
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by irkutsk | 2017-05-23 10:49 | | Comments(0)

「シャイロックの子供たち」を読みました(4月29日)

d0021786_10131730.jpgこの小説は東京第一銀行永原支店で働く様々な年齢や役職の行員たちの姿が描かれている。外から見ていると一見華やかに見える銀行員という職業の本当の姿が、筆者の経験をもとに実にリアルに描かれている。

物語は10の短編をまとめたものになっているが、全体で大きな一つのストーリーとなっている。

ノルマを達成するために容赦ないパワハラが横行する。銀行内でなくなった100万円を事故として報告することなく、役職者で金を出し合って事故を無かったことにする。みすみす損をすると分かっている投資信託を売らせる。ATMに入れるお金を金曜日の夕方に失敬して、ギャンブルに使い、当たったお金で月曜日の朝一番に返しておく。倒産しそうなことがわかっている会社に融資して、融資実績を上げる等々。

銀行の内情を知る筆者だから書けるミステリーである。

「シャイロックの子供たち」 池井戸潤著 文春文庫 2008年11月10日発行 630円+税
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by irkutsk | 2017-04-29 10:12 | | Comments(0)

「盲目的な恋と友情」を読みました(4月28日)

d0021786_9542123.jpg本書は2部構成になっている。第1部「恋」では、タカラジェンヌの母親を持つ蘭花が大学に入学し、大学の管弦楽団に入る。彼女は幼いころからバレエとヴァイオリンとピアノを習っていた。その大学の楽団に指揮者として来ていた茂美星近。彼は4年生のフルート奏者・稲葉要子先輩と付き合っていた。

やがて稲葉先輩は卒業し、茂美と別れ、蘭花が彼と付き合うようになる。そして蘭花4年生の最後の演奏会の当日、やって来た稲葉先輩に「ナナコさんにもう会った?」と聞かれる。「あの人には苦労するわよ」と言われたが、蘭花は何のことかわからなかった。だが、やがてこの言葉の意味を知らされることになる。

茂美は音大の恩師・室井に紹介されて蘭子の大学の管弦楽団の指揮に来ていたし、室井が海外へ行くときには助手として同行していた。その室井の妻が「菜々子」だったのである。恩師の妻と茂美の関係に悩むことになる蘭花だったが、その結末は意外なものだった…。

第2部「友情」では同じ大学の管弦楽団でやはりヴァイオリンを演奏する瑠利絵の視点から蘭花のこと、蘭花と茂美のこと、そして蘭花に比べて全然美人でなく、また明るくもない自分のことが描かれている。彼女は蘭花の親友だと思っていたが、蘭花はそうは思っていなかった。二人の気持ちのすれ違いが、蘭花と茂美をめぐる関係でやはり意外な結末を迎える。

異なった二人の視点から、一つのストーリーが描かれており、興味深く読むことができました。

「盲目的な恋と友情」 辻村深月著 新潮社 2014年5月20日 1500円+税
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by irkutsk | 2017-04-28 19:52 | | Comments(0)

「活版印刷三日月堂」を読みました(4月7日)

d0021786_5484580.jpg舞台は埼玉県川越市。川越運送店に勤めるハルさんは、同じ店に同居している観光案内所の柚原さん(三十代後半だがスタイルもよく20代に見られる)とアルバイトの大学院生・大西君とガラス店兼工房を経営している葛城さんと4人で毎日ジョギングをしていた。

ジョギング中のある日、三日月堂という活版印刷の店に電気がついているのを見つける。三日月堂は5年くらい前に閉店し、その後店主夫婦が亡くなって空き家になっていたのである。不思議に思って覗いていると、中から人が出てきた。

弓子さんである。彼女はこの印刷所を経営していた老夫婦の孫娘で28歳である。彼女とハルさんが初めて会ったのは、ハルさんが川越運送店で働き始めた頃で、弓子さんが小学校にあがる前。細い路地をお父さんの後ろから歩いていた弓子さんは、お父さんに呼ばれて駆け出した拍子にきらきら星のついたキーホルダーを落とした。「落としたよ」と声をかけ彼女にキーホルダーを拾ってあげたのだった。お母さんにプラネタリウムで買ってもらったものだと言い、でもお母さん死んじゃったと言った。弓子ちゃんは三日月堂をやっている祖父母の家に預けられ、週末だけお父さんがやって来ていたのだった。

弓子は川越運送店のパート募集の張り紙を見て、働きたいとやってきた。面接をし、パートとして採用した。ハルさんは昔、高校を卒業したときに自分の名前の入った三日月堂のレターセットを両親からもらったことを話し、今年高校を卒業し、北海道の大学へ行く息子の卒業のお祝いに、やはり自分がもらったのと同じレターセットを息子に送りたいと思っていた。弓子さんは学生時代、祖父母の印刷所を手伝っていたので、印刷機の使い方も知っていたし、機械や活字もすべてそのまま残っているので、やってみましょうということになり、機械の掃除、点検を始め、レターセットを印刷した。

これをきっかけに、活版印刷三日月堂は再び動き出した。そして活版印刷三日月堂をめぐる物語が3つ書かれている。それぞれの物語が読者をぐいぐいと本の中へ引き込み、1日で読み終えてしまった。

「活版印刷三日月堂」 ほしおさなえ ポプラ文庫 2016年6月5日発行 680円
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by irkutsk | 2017-04-07 07:00 | | Comments(0)