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カテゴリ:映画( 437 )

「彼らが本気で編むときは」を見に行きました(7月18日)

d0021786_942671.jpgキノシタホールへ「彼らが本気で編むときは」を見に行きました。

やさしさに満ちたトランスジェンダーの女性リンコと、彼女の心の美しさに惹かれ、すべてを受け入れる恋人のマキオ。そんなカップルの前に現れた、愛を知らない孤独な少女トモ。桜の季節に出会った3人が、それぞれの幸せを見つけるまでの心温まる60日。

小学5年生のトモ(柿原りんか)は、荒れ放題の部屋で母ヒロミ(ミムラ)と二人暮らし。ある日、ヒロミが男を追って姿を消す。一人きりになったトモは、叔父であるマキオ(桐谷健太)の家に向かう。母の家出は初めてではない。ただ以前と違うのは、マキオはリンコという美しい恋人と一緒に暮らしていた。それはトモが初めて出会う、トランスジェンダーの女性だった。

きれいに整頓された部屋でトモを優しく迎え入れるリンコ。食卓を彩るリンコのおいしい手料理に、安らぎを感じる団らんのひととき。母は決して与えてくれなかった家庭のぬくもりや、母よりも自分に愛情を注いでくれるリンコに戸惑いながらも信頼を寄せていくトモ。その姿にリンコも愛おしさを覚え始める。

リンコとマキオの出会いは、リンコが介護士として働く老人ホーム。マキオの母であり、トモの祖母である認知症のサユリ(りりィ)が入居している。献身的に自分の母を介護するリンコに、マキオが一目惚れしたのである。

悔しいことがあるたび、編み物をして心を落ち着かせてきたリンコ。そして今は、とある目標に向かい、“煩悩”を編み続けている。やがて“煩悩”作りには、マキオとトモも参加するようになる。

リンコの職場の同僚、佑香(門脇麦)の結婚式。佑香の幸せそうな笑顔に少なからず刺激を受けるリンコ。トモの母になりたい感情が日に日に膨らんでいく…。そんなリンコの思いをマキオは受け入れるのだった。

本当の家族ではないけれど、3人で過ごす特別な日々は、人生のかけがえのないもの、本当の幸せとは何かを教えてくれる至福の時間になっていく。このまま永遠に続くように思えた3人の関係だが、突然、ヒロミが帰ってくる―。

トモのクラスメイト・カイ(込江海翔)も、男の子を好きになる。そしてその自分の気持ちを告白する手紙を書くが、母親・ナオミ(小池栄子)に見つかり、破り捨てられてしまう。その夜、カイは睡眠薬を大量に飲んで自殺を図った。

今まであまり考えたことがなかったトランスジェンダーのことを考えさせられるいい映画でした。今も多数派でトランスジェンダーを認めず、彼らに近づかないようにという、いわゆる「世間の常識」派の母親を演じる小池栄子の演技も憎らしいほど素晴らしかった。

リンコが自分の気持ちを母親に打ち明け、それを受け入れ、リンコを女として育ててきた母親・フミコ(田中美佐子)の存在もリンコが世間の非難にさらされる中、大きな支えになったと思う。

「彼らが本気で編むときは」 2017年日本 127分 監督:荻上直子 出演:生田斗真、桐谷健太、柿原りんか、ミムラ、小池栄子ほか
「彼らが本気で編むときは」公式サイト
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by irkutsk | 2017-07-18 16:58 | 映画 | Comments(0)

「家族はつらいよ2」を見に行きました(7月11日)

d0021786_15122153.jpgミッドランドスクエアシネマへ「家族はつらいよ2」を見に行きました。今、話題になっている高齢者ドライバーの免許返納の話です。最近、平田周造(橋爪功)は車で出かけると、あちこちにぶつけて車は傷だらけ。物にぶつかっているうちはいいが、人にぶつかって怪我でもさせたら大変だと、周造に免許の返納を勧めるが、頑として受け入れない。またいつものように娘の成子(中嶋朋子)や末の息子の嫁の憲子(蒼井優)にその役を押し付けるがうまくいかない。妻の富子(吉行和子)は友達とオーロラを見に北欧へと出かけていく。

周造は行きつけの飲み屋の女将・かよ(風吹ジュン)を昼食に誘い、おいしいてんぷらを食べさせる店があると言って誘い、車で出かける。そしてその途中、道路工事をしていて迂回するように赤い棒を振っているガードマンを見て、高校時代の友人・丸田(小林稔侍)だと気づく。かつては大きな呉服屋の跡取りで、背が高く女子生徒からもモテモテだった丸田だったが、再会した丸田は73歳にもなって、カンカン照りの工事現場で汗をかきながら赤い棒を振って車を誘導していた。丸田に声をかけて丸田だと確認するが、かよとのデート中なのでそれきりに。そしてしばらく行ったところで、前を走っていたダンプカーに追突してしまう。かよが機転を利かせて、相手の運転手に2,3万渡して、事なきを得た。

そして数日後、かよの店で飲んでいた時にその話をすると、飲み仲間の向井が、弟が探偵をやっているから、そんなのすぐに見つけることができると言い、丸田を誘って久しぶりに高校の同窓会をやった。離婚や事業の失敗、借金に追われる生活など、悲しい人生を歩んできた丸田だったが、この日ばかりは大好物の銀杏をたべながら、久しぶりに楽しい夜を過ごした。その後、酔っぱらって上機嫌になった丸田は周造に連れられて平田家に泊まっていくことになるのだが…。

憲子の母も離婚し、自分の母親の介護をしながら、保険の外交の仕事を遅くまでやっている。

ぎくしゃくとしながらも3世代家族で孫たちと住んでいる自分の生活のありがたさを感じる周造だった。

昔は、三世代家族は当たり前だったが、いまでは珍しくなってしまった。親は子どもに気をつかい、一人でも大丈夫だからと言い、子どもたちはたまにしか親の元を訪ねず、訪ねてきてもそそくさと帰っていく。そして親が倒れたとか、病気になったとかいうと、病院や介護施設に入れる。かつては死というものが身近にあったが、最近では死を実感できない子供たちが増えている。現代社会の抱える家族の問題を喜劇タッチで描き出している山田洋二監督の手腕に拍手。

今後も「家族はつらいよ」が次々に作られることを願ってやまない。

「家族はつらいよ2」 2017年日本 115分 監督:山田洋二 出演:橋爪功、吉行和子、西川雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優、小林稔侍、笑福亭鶴瓶、劇団ひとりほか
「家族はつらいよ2」 公式サイト 

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by irkutsk | 2017-07-11 15:05 | 映画 | Comments(0)

「いつまた、君と ~何日君再来」を見に行きました(6月26日)

d0021786_9291777.jpg109シネマズ名古屋へ「いつまた、君と ~何日君再来」を見に行きました。

この映画の原作は向井理のおばあさん・芦村朋子が書いた手記です。彼女が夫・吾郎と結婚してからの生活を克明に描いたものです。二人は昭和15年に結婚して、南京へ行きます。その後上海へ引っ越し、終戦を迎え、着の身着のままで松山の朋子の実家に親子4人で身を寄せます。ところが朋子の父は無一文で帰ってきた吾郎につらく当たり、やがて家族4人で、茨城県で新しい生活を始めます。

最初はフォードの中古トラックを買って運送屋をやると意気込んでいたが、トラックは故障続きで結局トラックを二束三文で売り渡します。次にタイル工場の営業になるのですが、東京へ出張中に酔っ払いに殴られ、骨盤を折る大けがをします。ようやく治って帰ってみるとタイル工場は会計担当者が会社の金を持ち逃げして、倒産していました。次にやったのはところてん屋。大阪の友人・高杉から大量の寒天が送られてきたのをきっかけに始め、夏はかき氷、秋にはおでん屋と順調にいくかに見えた商売も、駅前にちゃんとした喫茶店や居酒屋などができると客足は遠のき、さらに酔っ払いが3人、酒を出せと騒ぎ朋子に迫り、吾郎と3人の酔っぱらいはけんかになるところでしたが、運よく巡査が来て酔っ払いは逃げていきました。ところがこの事件で店の客足はさらに遠のき、店をたたんで大阪に行き、高杉の働く石油会社で働くことになります。つらい肉体労働だったが、長女・真美も生まれ、親子5人楽しく暮らしていました。さらに秋にできる岸和田の製油所の所長にという話もあり、順風満帆のひとときでした。

ところが台風で建設中の岸和田の製油所は壊され、吾郎の身体にも異変が。骨と骨の間に腫瘍があるということで入院し、昭和29年7月にはこの世を去ることになりました。残された朋子と3人の子どもたち。朋子は高杉に頼んで石油会社での就職を頼みます。会社の寮で住み込みの賄い婦として雇われることになったのですが、まだ小さい真美を松山の実家に預けることにしました。

昭和の激動の時代を生きた朋子と吾郎の物語です。いろんな難題が次から次からと襲ってくるのですが、それを明るく乗り切ろうと夫や家族を励ます朋子でした。

映画を見ながら、私の育った時代もまだ戦後の名残があり、悪いことをして金儲けをするのは日常茶飯事で、真面目に働くものはバカを見るという時代でした。

大阪の製油所に勤めていた時、吾郎と朋子は子供たちが大きくなったら、二人で世界旅行をしたいね。モロッコの砂漠、パリのセーヌ川、イタリアのベニスのゴンドラ、ベスビオ火山も見たいと語り合った話を、絵が得意な吾郎が二人で旅行したかのような絵を描いてくれました。それは残された朋子の大切な宝物でした。幼い真美を両親に預けるとき、それを真美に渡したのでした。

そのことを母の手記で知った真美は、母の本当の気持ちを理解し、涙するのでした。

どんな時代に生きていても、どんな不幸が自分の身に押し寄せようとも、気持ちの持ち方ひとつでそれを乗り切ることができる。ささやかな幸せの瞬間をいくつ見つけ出せるかによってその人の人生は輝くものにもなるし、つまらないものにもなると感じました。

「いつまた、君と ~何日君再来」 2017年日本 114分 監督:深川栄洋 出演:尾野真千子、向井理、岸本加世子、イッセー尾形、駿河太郎、片桐はいり、野際陽子ほか
「いつまた、君と ~何日君再来」公式サイト
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by irkutsk | 2017-06-26 17:40 | 映画 | Comments(0)

「アズミ・ハルコは行方不明」を見に行きました(4月23日)

d0021786_20563592.jpgキノシタホールへ「アズミ・ハルコは行方不明」を見に行きました。

田舎の町での鬱屈した若者の姿を描く映画。男たちは勝手なやつらばかり。大人になるとセクハラ。それに対して女は? 映画に出て来る女子高校生の集団が男を襲い、暴行を加える。彼女たちは一緒にいる女には手を出さない。

安曇春子(蒼井優)は家庭では認知症の祖父と両親の4人暮らし。会社(社長を含め4人)に行けば社長と専務は春子の先輩の吉澤が早く辞めないかとセクハラ言動を繰り返す。

吉澤は仕事を辞め、アフリカ系フランス人と結婚してアフリカに行くことに。だが上司にはフランス人と結婚すると言い、社長たちは驚く。

男たちに「頼めばすぐに寝てくれる」と言われて、男たちにもてあそばれる愛菜(高畑充希)は、男たちに裏切られ、死んでやろうと思っていたところへ、アズミ・ハルコが現われ、「女の子にとっては、優雅な生活が最高の復習である」と言う。不幸な現状から軽やかに逃げだすことによって、現状をリセットして幸せになることで復讐するという方法もあるし、そのほうがいい。

ストーリーがつかみにくく、どうなっているのかわからなくなりそうな映画でした。田舎町に住む若者の閉塞感、そしてその中であがく若者たち。自分たちを押さえつけているものと直接対峙しなくても、すっと逃げて、幸せになり、外から自分を押さえつけていた者たちを見るというのも楽に、楽しく生きる方法ではないかと思いました。

「アズミ・ハルコは行方不明」 2016年日本 100分 監督:松井大悟 出演:蒼井優、高畑充希、大賀、葉山奨之ほか
「アズミ・ハルコは行方不明」公式サイト

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by irkutsk | 2017-04-23 17:45 | 映画 | Comments(0)

「LIONライオン 25年目のただいま」を見に行きました(4月17日)

d0021786_601918.jpg伏見ミリオン座へ「LIONライオン 25年目のただいま」を見に行きました。

1986年、インドのスラム街で暮らす5歳の少年サルーは、兄と仕事を探しにでかけた先で停車中の電車で眠り込んでしまい、家から遠く離れた大都市カルカッタ(コルカタ)まで来てしまう。途方に暮れている彼に声をかけてくれて、親切に家へ連れて行き、食事を与えてくれ、ベッドで寝させてくれた。翌日彼女の知り合いという男が来る。サルーは彼が人買いだということに気づき、必死で逃げる。

やがて彼は孤児院に入れられる。そこでは子どもたちが収容されている部屋にはカギがかけられ、先に入所していた女の子に「ここはひどいところよ」と言われる。夜になると、幼児愛好者の男に施設の職員が子どもを渡し、明日の朝までには返すようにと言う。連れて行かれるこどもは「いやだ」と泣き叫ぶ。

そんな時、サルーにオーストラリアへ養子に行くという話が持ち上がる。友人の女の子は「オーストラリアはとてもいいところよ」と養子の話を進める。そして飛行機で遠く離れたオーストラリア・タスマニアで夫婦に引き取られ、そこで暮らし始める。1年後、やはり同じ孤児院から養子でもう一人の男の子がやって来た。二人は兄弟として暮らしていくのだが…。

25年後、サルーはメルボルンの大学に入学し、友人の一人からGoogle Earthなら地球上のどこへでも行くことができると教えられる。サルーはおぼろげな記憶を頼りに自分の故郷探しに没頭する日々が続いた。そしてようやく自分が生まれ育った場所を見つけ出し、養父母の許しを得て、インドへ渡った。

ようやく探し当てた、かつての家には人は住んでなくて、ヤギが住んでいた。絶望に襲われたサルーは近くの人に、自分の子どもの時の写真を見せて、ここに住んでいた人はどこに行ったのかを訪ねる。そしてしばらくして現れたのは25年ぶりに会う母親だった。妹もいた。だが兄はサルーとはぐれた駅でサルーを探していて、列車にはねられて亡くなったと聞かされる。

実に様々な偶然が重なり、迷子になった子供が25年後に母親のもとへ帰るという感動のストーリーでした。サルーの子役を演じていたサニー・パワールがとてもかわいかったです。

「LIONライオン 25年目のただいま」 2016年オーストラリア 119分 監督:ガース・デイビス 出演:デブ・バテル、サニー・パワール、ルーニー・マーラー、ニコール・キッドマン、デビッド・ウェンハムほか
「LIONライオン 25年目のただいま」公式サイト
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by irkutsk | 2017-04-17 17:58 | 映画 | Comments(0)

「モン・ロア」を見に行きました(4月9日)

d0021786_645351.jpg名演小劇場へ「モン・ロア」を見に行きました。

「人は時々自分が見えなくなる」──スキー場で転倒してヒザに大けがを負った弁護士のトニー(エマニュエル・ベルコ)は、リハビリセンターの医師に“心”の話をされてポカンとする。しかし、ヒザの痛みは心の痛みと連動すると諭され、思い当たるあまりホロリと涙をこぼしてしまうのだった。

  あれは10年前、夜ふけ過ぎのクラブ。トニーは学生時代にバイトしていた店の常連客で、秘かに憧れていたジョルジオ(ヴァンサン・カッセル)と再会する。いつも美女たちを引き連れていたレストラン経営者のジョルジオは、マジメな学生だったトニーのことなど全く覚えていなかった。だが、バツイチになり昔よりは大胆になったトニーは、機転の利いた印象的なアプローチでジョルジオの心をつかむ。

二人が恋におちてからの進展は早かった。なぜかジョルジオは、プロポーズより先に「君の子供が欲しい」と言い出した。想像以上に遊び人だったジョルジオの過去に不安を抱くトニーだが、「今は違う」という彼の言葉を信じたかった。

やがてトニーの妊娠が判明し、二人はトニーの弟のソラル(ルイ・ガレル)と彼の恋人のバベット(イジルド・ル・ベスコ)、ごく親しい数人の友達に見守られて、ささやかだけれど愛情に満ちた結婚式を挙げるのだった。

ところが結婚するや否や、次々と“事件”が巻き起こる。まずはジョルジオの昔の彼女のアニエス(クリステル・サン=ルイ・オーギュスタン)が自殺未遂をはかる。別れてからも彼を保護者のように頼るアニエスが、トニーの妊娠にショックを受けたのだ。責任を感じたジョルジオは、アニエスのもとへと通うようになる。逆上したトニーは、「彼女にはもう構わない」と約束するジョルジオを無視して家を出て行く。ソラルの家に逃げ込み冷静になったトニーはジョルジオに謝るが、開き直った彼から「彼女の世話は続ける」と宣言されてしまう。

トニーの激しい一面を知ったジョルジオは、「別の部屋を借りた」と報告する。最低限の荷物だけ持ち込み、ケンカした時に使うと言うのだが、トニーがその部屋を訪ねると、オシャレな家具から食器、高級なワインに至るまですべてが揃っていた。一方、トニーが一人残された部屋には、突然裁判所の執行官が訪ねてきて、ジョルジオの債務不履行のためとトニーの家族の思い出の家具まで持ち去ってしまう。

再び二人を引き寄せたのは、息子の誕生だった。だが、それも束の間、トニーの我慢の限界を超える出来事が起こる。裏切っては愛を誓い、逃げ出しては舞い戻り、嵐のようなジョルジオに身も心も引き裂かれるトニー。

あの頃の痛みとヒザの痛みが少しずつ回復していく中、トニーは遂に離婚したいと告げた日のことを振り返る──。

「モン・ロア」 2015年フランス 126分 監督:マイウェン 出演:バンサン・カッセル、エマニュエル・ベルコ、ルイ・ガレル、イジルド・ベスコ、クリステル・サン・ルイ・オギュスタンほか

「モン・ロア」公式サイト
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by irkutsk | 2017-04-09 17:00 | 映画 | Comments(0)

「お父さんと伊藤さん」を見に行きました(2月18日)

d0021786_10591816.jpgキノシタホールへ「お父さんと伊藤さん」を見に行きました。

彩(上野樹里)は34歳。現在駅前の本屋でアルバイトをしている。同居している伊藤さんは54歳で学校の給食調理補助員をしている。二人は以前働いていたコンビニで知り合い、二人で暮らし始めて一年と少し。

8月下旬のある日、兄から電話があり、会って相談したいことがあるという。新宿のパーラーで兄が切り出したのは父と一緒に住んでくれないかという話だった。小学6年生の息子が中学受験だし、妻の理々子が精神的に不安定になっている。今すぐじゃなくて9月中にでもという話だった。そして家に帰ると、そこには伊藤さんだけではなく、父がいた。キッチンに4畳ほどのダイニング、それに6畳と4畳半の和室のあるアパートで、父は四畳半の部屋でいいと言って、自分のボストンバックと30センチ四方の段ボール箱を置いた。私たちは荷物を6畳の部屋に移し、74歳の父との3人暮らしが始まった。

しかし11月のある日、父は「しばらく出かける」というメモを残していなくなっていた。父の部屋をのぞくと黒いボストンバックと四角い段ボール箱がなくなっていた。

父はいったいどこへ行ったのか。そしてあの箱には何が入っていたのか。

携帯のGPS機能でお父さんの居所を突き止めた伊藤さんは、彩たち兄弟をレンタカーに乗せて父のもとへ行く。父がいたのは父の生家で庭には大きな柿の木があった。伊藤さんは「一晩3人で話し合ってみたら? 明日の朝迎えに来るから」と言って帰っていった。

翌日、結論も出ないままちっともやってこない伊藤さんを待っていたが、爆弾低気圧の通過で土砂降りの雨になり、雷も。そして庭の柿の木に雷が落ち、木が燃えはじめ、枝が折れて、火がうちに燃え移り家は焼けてしまった。

お父さんは有料老人ホームに行くことにしたと言って、彩たちのアパートを出て行った。

彩たちのお父さんは有料老人ホームに入れるだけのお金を持っていたから、そういう選択肢を選ぶことができたが、そうでなければ彩たちと住むほかはなかったのではないだろうか。現代の多くの家族が抱える老親問題をコミカルに描いているが、なかなかに考えさせられる映画だった。

「お父さんと伊藤さん」 2016年日本 119分 監督:タナダユキ 出演:上野樹里、リリー・フランキー、藤竜也、長谷川朝晴、安藤聖ほか 原作中澤日菜子
「お父さんと伊藤さん」公式サイト
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by irkutsk | 2017-02-18 16:57 | 映画 | Comments(0)

「レミニセンティア」を見に行きました(2月12日)

d0021786_23121483.jpg名古屋シネマテークへ「レミニセンティア」を見に行きました。

ロシア製SF映画に魅せられた日本人監督が、ロシアに渡り自主制作で完成させたSF映画。

ロシアのとある街で娘と暮らす小説家のミハエル。人の記憶を消す特殊能力を持つミハエルのもとには、記憶を消したい人たちが訪れる。友人に裏切られた男、恋人に裏切られた女、ウラジオストクからの飛行機で知り合ったばかりの運命の女性をモスクワの空港で着陸の時の事故で失った男、宇宙人にさらわれたという男、20年前に子どもを殺したという女。ミハエルは人びとの消した記憶を元に小説を書いていた。ある日、ミハエルは娘と行ったという動物園の記憶がないことに気がつき、記憶が思い出せない事実に悩み苦しんでいた。そんな時、ミハエルは記憶を呼び起こす特殊な能力を持つマリアと出会った。そして、消したい記憶があるまりあと、思い出したい記憶があるミハエルは取引をした。

ミハエルの娘・ミラーニヤを演じるのは、井上監督と妻でありプロデューサーでもある井上イリーナとの娘・井上美麗奈。

「レミニセンティア」 2016年日本 89分 監督:井上雅貴 出演:アレクサンダー・ツィルコフ、井上美麗奈、ユリア・アサードバ、イリーナ・ツィルコバ、デニス・ヤコベンコほか
「レミニセンティア」公式サイト
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by irkutsk | 2017-02-12 23:12 | 映画 | Comments(0)

「人生フルーツ」を見に行きました(2月2日)

d0021786_1202615.jpg名古屋シネマテークへ「人生フルーツ」を見に行きました。

 愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンの一隅。雑木林に囲まれた一軒の平屋。それは建築家の津端修一さんが、師であるアントニン・レーモンドの自邸に倣って建てた家。四季折々、キッチンガーデンを彩る70種の野菜と50種の果実が、妻・英子さんの手で美味しいごちそうに変わります。刺繍や編み物から機織りまで、何でもこなす英子さん。ふたりは、たがいの名を「さん付け」で呼び合います。長年連れ添った夫婦の暮らしは、細やかな気遣いと工夫に満ちていました。そう、「家は、暮らしの宝石箱でなくてはいけない」とは、モダニズムの巨匠ル・コルビュジエの言葉です。

 かつて日本住宅公団のエースだった修一さんは、阿佐ヶ谷住宅や多摩平団地などの都市計画に携わってきました。1960年代、風の通り道となる雑木林を残し、自然との共生を目指したニュータウンを計画。けれど、経済優先の時代はそれを許さず、完成したのは理想とはほど遠い無機質な大規模団地。修一さんは、それまでの仕事から距離を置き、自ら手がけたニュータウンに土地を買い、家を建て、雑木林を育てはじめました。あれから50年、ふたりはコツコツ、ゆっくりと時をためてきました。そして、90歳になった修一さんに新たな仕事の依頼がやってきます。

映画の中で何度も聞いたナレーションが印象的でした。
風が吹けば、枯葉が落ちる。
枯葉が落ちれば、土が肥える。
土が肥えれば、果実が実る。
こつこつ、ゆっくり。
人生、フルーツ。

90歳の修一さんと、87歳の英子さんの日常生活のドキュメンタリーです。お二人のような生活に少しでも近づければと思いました。「人生は、だんだん美しくなる。」

「人生フルーツ」 2016年日本 91分 監督:伏原健之 出演:津端修一、津端英子

「人生フルーツ」公式サイト
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by irkutsk | 2017-02-02 11:46 | 映画 | Comments(0)

「太陽の下で-真実の北朝鮮-」を見に行きました(2月1日)

d0021786_2153132.jpg名演小劇場へ「太陽の下で-真実の北朝鮮-」を見に行きました。

8歳のジンミは模範労働者の両親とともに平壌で暮らしている。ジンミは金日成の生誕記念「太陽節」で披露する舞踏の練習に余念がない。エリートの娘を持った両親は仕事仲間から祝福を浴び、まさに”理想の家族“の姿がそこにはあった。ところがドキュメンタリーの撮影とは名ばかりで、”北朝鮮側の監督“のOKが出るまで一家は繰り返し演技させられ、高級な住まいも、親の職業も、クラスメイトとの会話も、全て北朝鮮が理想の家族のイメージを作り上げるために仕組んだシナリオだった。疑問を感じたスタッフは、撮影の目的を”真実を映す“ことに切りかえその日から、録画スイッチを入れたままの撮影カメラを放置し、隠し撮りを敢行するが……。

もっとリアルな北朝鮮庶民の生活が見られるのかと期待して見に行ったが、やや期待外れの感があった。小学生の時からというより、生まれたときからすべて偉大なキム・ジョンウン元帥同志のおかげですと教えられて育っている子供たちは、70数年前の日本の子どもたちを見ているようだった。歴代天皇の名前や教育勅語を暗記させられ、国民は、天皇陛下は神様で、自分たちは天皇の赤子であると教えられ、それを信じていた。国民は嘘の情報を信じさせられ、無謀な戦争の犠牲となった。そんな時代が再びやってこようとしているのではないか。

「目糞鼻糞を笑う」。日本が目糞にならないことを願うばかりである。

「太陽の下で-真実の北朝鮮-」 2015年チェコ・ロシア・ドイツ・ラトビア・北朝鮮 110分 監督:ヴィタリー・マンスキー 

「太陽の下で-真実の北朝鮮-」公式サイト

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by irkutsk | 2017-02-01 21:54 | 映画 | Comments(0)