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「奇跡のリンゴ」(9月10日)

「奇跡のリンゴ」(9月10日)_d0021786_1563939.jpg無農薬、無肥料でりんごを作った木村秋則さんの話です。農家の次男坊として生まれた木村は、一度は横浜へ出たが、兄が自衛隊に入って家を継ぐ者がいなくなったので帰って来いと言われ、青森県岩木町(現在は弘前市)へ戻る。ところが兄は自衛隊を辞めて家に帰ってくることになった。木村は中学時代の同級生と結婚し、婿養子に入った。

妻は農薬に敏感で、散布するたびに1週間も寝込んでいた。そんな時ふとした偶然から木村は福岡正信さんの書いた「自然農法」という本を買って読んだ。

福岡が目指した農業は、何もしない農業だ。自然はそれ自体で完結したシステムで、人が手助けなどしなくても、草木は葉を茂らせ。花を咲かせ、種を実らせるという考えだ。

木村はりんごを栽培するために、春先から9月の収穫期まで十数回の農薬散布を行ってた。そうしなければ病気や虫からりんごを守ることができないと信じていたからだ。

もし、農薬を使わずにりんごを作れたらすごいなあと思い、農薬を散布する回数を減らし、肥料も化学肥料をやめ鶏糞を集めて堆肥を作り始めた。りんごの収量は減ったが、農薬代も減ったので、さほどダメージは受けなかった。これなら無農薬栽培も可能かもしれないと義父の許しも得て、1978年ごろから無農薬栽培を始めた。ところが病気や虫でりんごの木はどんどん弱っていき、とうとう花をつけることもなくなって、枯れてしまうのではないかと思われるようになった。

そんな状態が8年も続き、木村は経済的にも、精神的にも追い込まれ自殺を覚悟して、夜岩木山に登った。そこで彼が見たものは山の中でたわわに実ったりんごの木だった。これは木村の見間違いで、どんぐりの木だった。だが、この見間違いで木村は肥料も農薬もやらない山の中でたくさんの実をつけているどんぐりが生えている地面のことに気がついた。
雑草が生え放題で、地面は足が沈むくらいふかふかだった。木村は夢中で足元の土を掘っていた。手でいくらでも掘れる。こんな土は初めてだった。

この土を作ればいいんだ。今までりんごの木の見える部分だけしか見てこなかった。りんごの木の根のことを考えてなかった。堆肥を与え、養分を奪われないように雑草を刈ることだけしか考えてこなかった。このことに気づき、またどんぐりの木が元気なのは自然の生態系の中でいろんな細菌や虫や鳥などと共生しているからなんだということに気づく。

それからりんご畑に大豆をまき雑草も茂らせた。その草陰では虫が鳴き、その虫を蛙が追い、それを蛇が追う。更に野鼠や野うさぎまで走り回っていた。りんごの木は少しだけ元気になった。

農薬を使わなくなってわかったことがあると言う。農薬を使っていると、りんごの木が病気や害虫と戦う力を衰えさせてしまうのだ。楽するからいけないんだ。車にばかり乗っていると足腰が弱くなるでしょう。同じことが起きるわけだと。

だが、これで万事が解決したわけではなかった。ずっと咲かなかったりんごの花が咲き、翌年には実もつけた。しかしその大きさはピンポン球くらいの大きさしかなく、加工用としてしてしか出荷できなかった。翌年は摘花を丁寧にやり、りんごの大きさまでになったが、市場では「これがりんごか」と見向きもされなかった。見栄えが良くて大きいりんごしか相手にされなかった。でも木村はきっと無農薬のりんごを食べたいというお客さんはいるはずだと、当てもなく大阪へりんごを売りに行くことに。1個60円で売ったが見栄えが悪いのでほとんど売れなかった。

りんごに秋が来たのを教えるために、1回だけ草刈をするとりんごのみが赤くなると言う。
木村は「この畑にはぎりぎりの栄養しかないから、りんごの木が元々持っていた自然の力が引き出されたんだと思うのな。知れば知るほどよ、自然というものは何とすごいものだと思う。自然の手伝いをして、その恵みを分けてもらう。それが農業の本当の姿なんだよ。そうあるべき農業の姿だな。今の農業は、残念ながらその姿から外れているよ。」と言っている。

自然を壊して、農薬や化学肥料漬けでできた野菜や果物を日常食べているわたしには、目からうろこの一冊でした。彼の一途に無農薬でりんごを作ると信念には頭が下がりました。彼がどんぐりの木の生えている山の土に気づき、それからりんご畑に草を生やし、土を自然の状態にもどしてやるというところに感動しました。無農薬りんごができてからも彼のりんご研究は続いており、あちこちへ出かけて行って話をし、栽培法を教えている。もっと安い値段でたくさんの人に無農薬りんごを食べてほしいというのが彼の望みだ。

「奇跡のリンゴ」  石川拓治著  幻冬舎発行  1300円+消費税
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by irkutsk | 2009-09-10 15:08 | | Comments(0)