「正しく知る地球温暖化」(9月15日)
IPCCが地球温暖化の原因はCO2の急激な増加であると言い出してから、マスコミや世界中の国々がこれを利用して何とか自国の利益に結び付けようと躍起になっているように思われてならない。そんな中で日本政府はまるできれいごとでこの問題を見ているような気がしてならない。そしてそのしわ寄せは国民が負うことになるのだ。増税や電気代、ガス代、公共交通機関の運賃値上げ、ガソリン代の値上げなどによって。
そんな中で見つけたのがこの赤祖父俊一氏の書いた「正しく知る地球温暖化」という本である。彼は、「地球温暖化は進んでいる。しかし、現在進行中の温暖化の大部分(6分の5)は地球の自然変動であり、人類活動により放出された炭酸ガスの温室効果によるのはわずか6分の1程度である可能性が高い」と言っている。
地球は長い歴史の中で氷河期と間氷河期を繰り返しているが、その間にも小さな寒暖を繰り返している。そして近いところでは1000年ごろが暖かい時期で、1400~1800年ごろが小氷河期と呼ばれる寒冷化した期間であるという。この小氷河期の存在は氷河の状態や過去の文献、科学的なデータでも明らかである。1600年代テムズ川はしばしば凍っていたし、1800年代までカナダ北部の島々を通る北西航路はほとんど氷で閉ざされていた。
そして、小氷河期が終わり、温暖化が始まったのは1800年ごろである。1800年ごろから氷河の後退、海水面の上昇は起こっており、海水面の上昇にいたっては過去100年間の平均で1.7mm/年だが、現在の上昇率は1.4mm/年と上昇率は下がっている。
地球の大きな気候変動の仕組みがまだ解明されていないにもかかわらず、CO2濃度との関係だけでスーパーコンピューターを使ってはじき出した数字を根拠にCO2を減らせば温暖化を防止できると言うのはまさに人間の傲慢さと言わなければならない。人間に地球の気候を変えるほどの力があるとは到底思えない。もしそんなことが可能なら、大型台風や旱魃、大雨だって防ぐことができるが、誰もそんなことが可能だとは思っていない。なのに地球全体の温度を下げることが可能だなどというトリックにどうして簡単にだまされてしまっているのか。マスコミの責任も重大だと思う。
自然災害は何でも地球温暖化のせいにし、そのたびにCO2削減が叫ばれる。だが自然災害の原因は複雑で、人間による乱開発の影響も見逃すことはできない。
そして現在世界で取り組まれようとしているCO2削減交渉は炭酸ガス排出量が本当に減るわけではなく、排出権取引などを巡って狸とキツネの化かし合いのようである。日本はいつもうまくだまされるような気がするが。
この本の著者赤祖父俊一氏は1986年から1999年までアラスカ大学地球物理学研究所の所長を務め、2000年から2007年までアラスカ大学国際北極圏研究センター所長を務めている。科学的なデータをもとにIPCCの地球温暖化CO2犯人説を批判している。地球温暖化は自然現象として進んでいるのであり、CO2の影響は6分の1でしかないというのが彼の持論だ。地球温暖化を考えるための貴重な一冊である。
「正しく知る地球温暖化」 赤祖父俊一著 株式会社誠文堂新光社発行
1400円+消費税