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「アミ3度目の約束」を読みました(12月13日)

「アミ3度目の約束」を読みました(12月13日)_d0021786_9263626.jpg「アミ 小さな宇宙人」、「もどってきたアミ」に続く3作目です。2作目の「もどってきたアミ」でペドゥリートは双子の魂であるキア星のビンカと知り合います。そしてこの3作目はビンカとペドゥリートを軸に話が進みます。二人は一緒に住みたいという強い希望をアミに伝え、ビンカの家族(叔父さんと叔母さん)を説得しなければダメだと言われ、ビンカは二人を説得しようとします。ところが叔父さんは知り合いの精神科医に彼女を見せることにしました。ビンカの住むキア星には好戦的なテリと非好戦的なスワマという二つの人類が住んでいます。そして叔父さんのゴロはテリなのです。その叔父さんを説得することはとても不可能なことのように思えました。
ところがキア星ではテリがだんだんとスワマに変わっていくという過程が進行していたのです。ビンカの叔父のゴロもスワマに変わり、ビンカが地球でペドゥリートと暮らすことを認めるようになったのでした。そしてビンカとペドゥリートはそれぞれの星の人たちに、自分たちが経験したこと、見てきたことを本にしてそれぞれの星の人たちに知らせるという使命を果たすことになるのです。

この本でも、ペドゥリートとビンカが進んだ宇宙社会を見てきて勉強することになります。「競争とは利己主義の上品な言葉で、人を押しつぶしてでも勝たなければいけない、のし上がっていかなきゃ意味がないという密林の法である」といっています。「今の地球は汚職のないところはないし、暴力や犯罪は増えるばかりで、研がれた爪や牙は隣人に向けられ、町には錠前や鉄格子や拳銃や壁が増え、貧しい人々と富んだ人たちの差は日増しに広がっている。人間にとっての必要なものとか深い意義はどこへいったの?本当の友情とかやさしさ、親切心と愛情はどうなったの?」

「大多数の人がそう考えているみたいだからって、決してそれにしたがっちゃダメだよ。そうじゃなくてきみの心が命じるところに、きみの知性にしたがうんだよ。多くの人は人と意見が違うのがこわくて、あるいは自分できちっと判断できるところまでいってなくて他人と同じ意見を持っているようなふりをする。」

また死についても次のように書いています。
「宇宙は自分たちの創造物が新たな体験、新たな環境、新たな場所、新たな人、新たな考えに触れることで進化し、成長していってほしいと考えている。ところがそれを阻むのがきみたち自身の執着心なんだ。きみたちはあまりにいろいろなものにしがみつきすぎている。自分たちの場所、自分たちの愛する人、自分たちの物、自分たちのすがた、自分たちの考え、思い出‥‥すべてを手放したがらない。きみたちがそうしたもろもろの執着から自由になって別の状態、別の幸福へと通り抜けるためのたった一つの道は、いまその身にまとっている服―― つまり肉体のことだね ――を脱ぎ捨てることだ。肉体がほろび死を迎えたときにようやく君たちは執着から逃れて、あらたな状態に入ることができるんだ。その代わりにきみたちはかつての人生でのことを何一つ―― どんなに執着があるものでも ――おぼえてはいない。本当は、一人ひとりの心の奥に眠っているんだけど。」

競争よりも協力が大切だ。その方がずっとストレスも少ないともいっています。そして最後に「君たちが高い水準に移って行けない理由はただ一つ。さまざまな分野において、きみたちのものの見方がまだ変化できていないからだよ。君たちの文明を導いている物質主義的な観点や外面重視の視点からもっと人間の内面を完成するというテーマに向けてピントを合わせていく必要があるんだ」と言っています。

そして「どうしてその変化が起こらないんですか?」という質問に対して「それは、考えるのは自分たちのことばかり、みんなの豊かさについては顧みようとしないわずかな人たちが世界を動かす舵を握っているからなんだよ。それにその人たちが握っている権力はとても大きいから自分たちにとって都合がいいと“考えている”状況に向けて勝手な思惑だけで人類全体を引きずり回しているせいなんだ。」と答えています。

まさに今の世界が私利私欲の利己主義と競争の中で築いた絶大な権力を握る一部の人たちによって支配され、彼らの執着心の犠牲になって多くの人たちが短い人生を送ったり、苦難の人生を強いられることになっています。

アミ三部作、自分自身の生き方について、そして世界全体について、宇宙の進化について考えさせられるすばらしい本でした。

「アミ3度目の約束」 エンリケ・バリオス著 石原彰二訳 さくらももこ絵
徳間書店 2000年11月30日発行  1500円+税
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by irkutsk | 2010-12-13 09:26 | | Comments(0)