「天国からの案内人」を読みました(12月22日)
そんなある夕暮れ、ジュリエットはうわの空でうるさいこちら側の歩道から少しは静かな向かい側の歩道へ行こうと道路を渡り始めた。そこに考えごとをしていたサムの車が。サムはもうブレーキをかけても間に合わないとハンドルを思い切り右に切った。危うく彼女をはねるところだったがサムの運転する四輪駆動車は歩道に乗り上げて止まった。「何考えてるの!人殺し!」と言うジュリエットの怒鳴り声に、彼はいつも助手席においてある医療用バッグを持って飛び出し、「大丈夫ですか?どこかけがは?わたしは医者です。診察もできるし、病院へお送りしてもいい」と声をかけた。
そして二人は運命的な出会いを果たし、おわびに元気のつく飲み物をとサムが誘いホテルのカフェへ。そしてお互いの電話番号を教えあい、サムは彼女に名刺を渡してその日は別れたのだった。お互いにお互いのことが気になっていた。
そして翌日、ジュリエットは彼の病院を訪れると、彼はもう帰っていたので何とか彼の住所を聞き出し、彼のうちを訪ねた。そして出発までの2日間彼と二人で過ごすことになった。でもお互いにウソをつきあっていた。ジュリエットは、自分は弁護士だと。サムは結婚していて妻がいると。
日曜日、ジュリエットはフランス行きの飛行機に乗るが、サムのことが忘れられずに無理を言って飛行機から降りる。ところがその飛行機が途中で墜落し、乗員、乗客すべてが死亡する。警察はテロの可能性を疑い、離陸直前に無理やり飛行機から降りた女性ジュリエットを逮捕する。
サムはジュリエットが飛行機に乗ったものを思い、絶望に陥る。そこへ一人の女性刑事グレース・コステロがコーヒーを持って彼に近寄り、ジュリエットは飛行機に乗らなかった、生きているということを告げる。そして「714便の墜落後、フランス人女性を拘留」という記事が載った明日付けの新聞を見せる。そして彼女は「ジュリエットはあの事故で死ぬはずだった。それは物事の秩序の一部なの。わたしが遣わされたのはそのミスを正すため」と言った。後で彼は女性刑事グレース・コステロのことを調べたが、何と彼女は10年前に死んでいたのだった。
天国からの使者グレース・コステロがジュリエットを連れて行くという。サムは何とか彼女からジュリエットを守ろうとする。果たしてジュリエットはどうなるのか?
この本を読んで著者のギョーム・ミュッソはやや運命論的な考えを持っているのではないだろうかと思った。確かに人の人生はその人が予め設計したとおりに進んでいるのかもしれない。しかしある事件が起こった後、その人がどう生きるのかというところまでは決まっていないと思う。事件の後、絶望して自殺する人、その苦しみを引きずって生きて行く人、事件をこれからの人生においてプラスに考えられる人、いろんな人がいる。事件や出来事の後、どう生きるのかがその人の人生の課題のような気がする。
「天国からの案内人」 ギョーム・ミュッソ著 堀内久美子訳
小学館文庫 2009年11月11日発行 838円+税