「アジアの時代を予言して20年」を読みました(1月4日)
現在アメリカが低金利政策を続ける一方、大量のドル紙幣を増刷している現状を次のように予想しています。「ただ失ったものがドルの不足だけだとすれば、もともとドル紙幣の増刷はアメリカのお得意とするところですから、失った分以上にさらに増刷すれば、少なくとも一時期ピンチから逃れることは可能です。そのプロセスでドルに対する信用が一段と低下することは避けられません」。
また日本のバブル崩壊後、続けてきた低金利政策が何をもたらしたのかについても次のように言っています。「バブルがはじけて僅か15,6年の間に低金利政策を続けた結果が、日本人が稼ぎ出した資産のかなりの部分をアメリカの機関投資家たちの手に委ねることになってしまいました。せっせと汗水垂らして稼ぐことと金で金を稼ぐカラクリの恐ろしさを改めて比較対照させてもらっているところです」。
そして今アメリカの低金利がアメリカを凋落させる可能性があるとも言っています。かつて日本でバブル後の経済建て直しのために低金利を続けたが効果がなく、低金利の円が買われ、その円で日本の株式や不動産をアメリカの機関投資家たちに買い占められたのと同じことがアメリカでおこるということです。
現在中国が抱えている資産インフレについても、貿易黒字が積み上がり、過剰流動性が増し、人民元が国内にあふれた結果、株や不動産にそのお金が注ぎ込まれている。これにストップをかけるには貿易黒字を減らすしかない。つまり人民元を切り上げるしかない。しかし政府は輸出業者に打撃を与えることになるのでなかなか踏み切れないでいる。外貨が増えた分だけ国は金持ちになったと錯覚を起こしがちだが、もともとは民間企業のお金なのでその使い方を誤ると物価高をもたらしたり、資産インフレを惹き起こしたりして、社会秩序に大変動をもたらすと言っています。
株についても「株価の下がっている時は、持ち株の入れ替えをするまたとないチャンスなのです。損切りするときは買値でくよくよすることはありません。間違えるかもしれませんが、間違った分は、間違わなかった分で取り返せばよいのです」と言っています。
株をやる人はどんな株を、どんな値段で買うかがとても大切だと言っています。どんな株を買うかは、成長株(毎年純利益が着実に増えている会社)を。そしてどんな値段で買うかは安い時。つまり誰もが気がつかないとき、そして誰もが怖がって買いたがらないときだそうです。買っても株価はすぐには上がらないから、かなりの時間苦痛に耐えなければなりません。時には更に安い値段で買い増さなければならないかもしれません。そして長い潜伏期が過ぎて春の鳥の啼く声を聞いてもすぐに売ってはいけない。株は冬眠から覚めると勢いがついているから、行きつ戻りつ息の長い上がり方をします。邱永漢さんは「倍になったら半分を売って元を取る。あとはタダの株だから下がっても気にならないと」言っています。
最後に邱永漢さんの株式投資の三原則を紹介します。
1、証券会社のセールスマンの言うことを聞くな。
2、ダウ平均に惑わされるな。
3、借金をして株を買うな。
このシリーズの本は毎回、その時の経済情勢の解説をしているのですが、ほぼその解説どおりになっているという点では邱永漢氏の経済を見る目の確かさに感心させられます。株をやっている人も、やっていない人も勉強になる本です。
「アジアの時代を予言して20年」 邱永漢著 グラフ社 2010年12月5日発行 1300円+税