「図書館戦争」を読みました(5月18日)
さて、「図書館戦争」という題名からして、ちょっときな臭い感じがしますが、そうなんです。昭和が終わって正化と元号が改められて31年がたった2019年の東京が舞台の近未来小説です。
公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる法律として「メディア良化法」が成立・施行されたのは昭和最終年度であった。検閲に関する権限が曖昧で拡大解釈の余地が広く、検閲の基準が執行者の恣意で左右される可能性を意図的に含んだ内容であったし、検閲基準に関しては細則や施行令で随時補うことができ、その裁量権は執行機関に委ねられるという驚くべき無制約ぶりであった。
そしてメディア良化法の検閲権に対抗する勢力となることを期待されて成立したのが通称「図書館の自由法」-既存の図書館法全三章に付け加える形で成立した図書館法第四章である。
そしてこの物語は2019年の図書館と良化委員会の攻防を図書館側から描いた物語です。当時図書館には自らを守るために武装した図書隊が編成されており、この物語はこの4月に図書隊に採用された笠原郁という主人公と、同期で図書館職員として採用された美人で情報通、そして郁にはずけずけと本当のことを言う柴崎、上司の堂上など郁を取りまく人たちの中で新米図書隊員笠原郁がいろんな失敗や経験を積み重ねていくという話です。
図書隊とメディア良化委員会の衝突や、館長代理による「問題」図書の隠蔽、良化委員会の集会にロケット花火を打ち込んだ少年を捕まえて、彼らに図書館主催のフォーラムに参加させたり、日野の悲劇といわれる日野図書館を良化委員会が襲撃し、12人の図書館員が亡くなった事件などなどいろいろな事件が描かれている。しかし、この小説には単なる事件のおもしろさよりも、そこでそれぞれの任務についている人間がリアルに描かれているのがすばらしい。
すでにこの「図書館戦争」の続編「図書館内乱」も文庫で発行されており、5月25日には続編「図書館危機」が、6月25日には「図書館革命」が発行される予定である。
更に「別冊図書館戦争Ⅰ」、「別冊図書館戦争Ⅱ」が7月、8月と文庫で発売される予定である。
「図書館戦争」の巻末には昨日(5月17日)亡くなられた児玉清さんと有川浩さんとの文庫版発行を前に行なわれた特別対談も掲載されている。
「図書館戦争」 有川浩著 角川文庫 2011年4月25日発行 667円+税