「四月一日」を読みました(5月26日)
4月1日に、12年前に別れた元彼から携帯にメッセージが入っていて「ツツイ」という名前が元彼の名前だったというのを思い出すのに少し時間がかかった。メッセージの内容は次のようなものだった。「とつぜん申し訳ないんだけど、お願いがあって、こんなこと言える立場じゃないんだけど、きみの子に会わせてくれないか」。当時彼には奥さんがあり、それを承知でつき合っていた。そして彼は妻とは別れると言っていたが、ちっとも別れない。12年前の4月1日、有子は子どもができたと嘘をついて、彼を試したが、期待通りの彼氏ではなかったので、別れた。そして12年ぶりの電話。彼は奥さんと別れて、今重大な病気にかかっているというメールだった。
有子は結婚しているが現在夫とは別居中。そして携帯やパソコンのメールでお互いの状況を知らせあう。有子は別居のことも離婚するだろうことも書かず、今は小さいがいごこちのいい会社で働いている。30歳になる直前に結婚して、地味で平凡だが幸せに暮らしていると書く。
そして元彼の史宏と会うことに。こどもは12歳の女の子でお菓子作りが得意で、パティシエになりたいと言っていて、中学を出てフランスへ修行に行くと言っているとウソをつく。そして自分が12歳の時のちょっとぼけた写真を持っていって見せた。そして「会わせてもいいよ。でもすぐってわけにはいかない。ねえ、来年の4月1日ってのはどう」言う。
そして史宏と別れて歩いていて、はたと気がつく。4月1日。史宏が電話をかけてきた日だ。
どちらが嘘をついているのか、本当のことをいっているのか、「四月一日」をキーワードに嘘がほんとに、ほんとが嘘に変わっていく。いや事実は一つなのだから、主人公の有子の描いたイメージが嘘とほんとの世界を揺れ動く。さらに自分がついた嘘に応える史宏は本当のことを言っているのか、嘘なのか。
びっくりする短編小説でした。
「四月一日」 角田光代著 雑誌「ユリイカ」5月号に掲載
ブログに、永作博美さんが出演した『雨』の舞台の感想などを書いて見ましたので、是非読んでみてください。
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