「別冊図書館戦争Ⅰ」を読みました(9月4日)
大きな事件は起こりませんが、図書館が日常的に対応している問題を取り上げ、それとあわせて郁と堂上の恋の進行がリアルに描かれていて、本の帯にも書かれている「もどかしいにも程がある!」が実感できます。
この本でも図書館の抱えているいくつかの問題が書かれています。最初は図書の窃盗。剥がされたバーコードシールがゴミ箱に捨てられているのを発見した鞠江ちゃん(耳が聞こえない大学生で、堂上の同期小牧の幼馴染であり彼女)が図書館員に知らせたことから、誰かがバーコードシールを剥がして本を盗んでいったということが判明し、犯人を捜すことに。そして犯人を捕まえてみると大学生だった。彼は私立大学に野球のスポーツ推薦で入学したが、2年生の時に野球選手として致命的な負傷を負い、特待制度を剥奪された。学費は家庭でなんとかなったが、一般教養の国文学の講義の単位がどうしてもとれず、悩んでいたところへ講義を受け持っている准教授から研究に必要な書籍を贈呈してくれたら単位をやると言われる。准教授の要求した書籍は学生のアルバイト代で買える程度のものではなかった。また准教授は暗に書店や古書店、図書館からの窃盗を手段として唆したという。
二つ目は泥酔者の問題。酔って図書館へ来て児童読書室の絨毯の上でいびきをかいて寝ている。注意すると「俺は納税者だぞ!図書館は税金で作った施設だろうが、納税者が利用して何が悪いんだ!それを何だ、まるで悪いことでもしたように引っ立てやがって!」と居直る。
薬物常習者が図書館に入り込み利用者に危害を加えるとか、母親と来ていた子どもがいつもいなくなり、彼を探すことになったりなど図書館の日常でよく起こる問題が取り上げられている。
「別冊図書館戦争Ⅰ」 有川浩著 角川文庫 2011年7月25日発行 629円+税