「暴走する原発」を読みました(9月21日)
3月12日(1号機)、14日(3号機)、15日(4号機)で水素爆発が起こり、大量の放射性物質が風に乗って北西方向へ流れていったが、避難指示の対象となったのは原発から半径20キロ圏だけでした。風下の浪江町や大館村ではその後も高濃度に汚染された土地で生活を続けていました。4月22日になりようやく計画的避難区域に指定され、1か月を目処に避難するようにとの指示が出されました。
最初の1号機の爆発から、避難区域が3km、10km、20kmと拡大されたが、このときも「念のため」「万に一つの事態のために」「大した規模ではない」「人体に影響もない」と言ってきました。事故を小さく見せようということだけしか彼らの念頭にはなく、多くの人々がそのせいで被曝し続けたのです。
またこの本では今後起こることとして、小児甲状腺がんの増加を懸念しています。枝野官房長官が連発していた「ただちに健康に影響はない」という言葉通り、甲状腺がんが増加し始めるのは事故後4~5年後からです。これはチェルノブイリで実際に起こったことです。3月12日の爆発があったあとすぐに子ども達にヨード剤を飲ませなければならなかったのです。
また、セシウム137によって汚染された土地は放棄するしかないといっています。セシウムの半減期は30年です(30年たっても現在の半分にしかならないということです)。放射能は人為的に消すことはできないのです。除染すると言って、ある場所の放射性物質を洗い流したり、土をすきとったりしてしても、放射性物質が移動するだけでなくなるわけではありませんし、広大な汚染地域から放射性物質を取り除くことは物理的にも、経済的にもできません。
今回の福島原発事故が起こっても、まだ原発は動き続けているし、さらに定期検査中の原発の再稼動を進めようという原子力で儲けている人たちがいます。本当なら福島原発事故の原因を究明し、万全の事故対策(あるかどうかわからないが)が立てられないうちは原発はすべて停止するべきです。
チェルノブイリの救援に長年関わってきた広河隆一氏の、チェルノブイリの教訓を是非日本の福島原発事故に役立てて欲しいという気持が伝わる一冊です。是非原発関係者、官僚、政治家に読んで欲しい本です。
「暴走する原発」 広河隆一著 小学館 2011年5月25日発行 1300円+税