「峠うどん物語」(上・下)を読みました(2月14日)
峠の上にあった「長寿庵」といううどん屋さんの話を中学2年生のよっちゃん(淑子)の口から語らせるというなかなか面白い形式の小説でした。おじいちゃんとおばあちゃんが峠の上でやっているうどん屋さんの前に市の斎場ができ、お客さんもお通夜や告別式帰りの人たちに変わり、名前も「長寿庵」ではまずかろうということで、「峠うどん」に変えることに。
よっちゃん(淑子)の両親は小学校の先生をしていて、お父さんは「峠うどん」を継ぐ気はない。よっちゃんの両親はおじいちゃんとおばあちゃんにもう店を閉めて隠居生活をしたらどうかと勧めるが、頑固なおじいちゃんとおじいちゃんを信頼しているおばあちゃんは店を続ける。よっちゃんは「峠うどん」が大好きで、店が忙しい時には手伝いに行く。
そして、おじいちゃんとおばあちゃんに人の死、それと人々がどう向き合うべきなのかについて教えられる。お母さんが子供の頃住んでいた市営住宅で子どもの人気ものだった「しぇーのおじさん」こと岸本さんが病院に入院していて死にそうだという話を聞く。岸本さんは市営住宅の子どもの面倒をよく見て、親の信頼を得、そしてその親からお金を借りて、ある日姿をくらましたのだった。しかし、被害にあった親たちや子どもたちはもう彼に恨みは抱いておらず、彼を病院に見舞いに行き、葬儀にも参加することに。
他にも「峠うどん」をめぐるいくつかの話が章ごとにまとめられており、読み応えのある本でした。
六曜についてのよっちゃんの解説もあり勉強になりました。六曜は先勝、友引、先負、仏滅、大安、赤口の順で、旧暦の月の数字と日の数字を足して六で割り切れれば大安、六で割った時の余りが三なら友引。旧暦の1月、7月の1日は先勝、2月、8月の1日は友引、3月、9月の1日は先負、4月、10月の1日は仏滅、5月、11月の1日は大安、6月、12月の1日は赤口だということです。
「峠うどん物語」(上・下) 重松清著 講談社 2011年9月1日発行
各1500円+税