「ジョゼと虎と魚たち」を読みました(7月24日)
でも原作をあそこまで脚色して、ちょっとやりすぎじゃないかという気がした。
映画では恒夫は何人もの女性と関係を持つプレイボーイとして描かれており、上野樹里演じる香苗にもアタックする。そして彼女が福祉関係に就職を希望していて、ジョゼのうちの改修工事が終わった日に彼女がやってくる。そしてジョゼは恒夫と香苗の会話を押入れで聞いていて、恒夫に「もう来るな」と言う。だが原作では忙しくてしばらくジョゼのうちに行っていなかったと簡単に書かれている。もちろん香苗なる人物も登場しない。
そもそも最初の出だしから違う。原作では夜、障害者の孫を見られたくないおばあさんがジョゼを車椅子に乗せて散歩に出かけるのだが、映画では早朝、大きな乳母車に乗せて、毛布をかけて散歩しているという設定になっている。
映画のラストシーンでは恒夫はジョゼを捨てて、香苗のところへ行くのだが、原作では二人で九州の果ての島へ旅行に行き、水族館のついたホテルに泊まり、夜更けに目を覚ますと月明かりが差し込んでいてまるで部屋中が海底洞窟の水族館のようだった。そして「恒夫はいつジョゼから去るかわからないが、傍にいる限りは幸福で、それでいいとジョゼは思う。そしてジョゼは幸福を考える時、それは死と同義語に思える。完全無欠な幸福は、死そのものだった。」というように終わっている。
その他、細かいところでも原作とかなり違うところが多かった。
「ジョゼと虎と魚たち」 田辺聖子 角川文庫 1987年1月10日発行 476円