「人に必要とされる会社をつくる」を読みました(9月14日)
一方、社員たちも解雇を言い渡され、みんな呆けた顔をしていました。「もう一度会社を立て直そう」という声は誰一人あげませんでした。社員の呆けた顔を見て、会社が社員を捨てるとこんな顔になるのだ。二度とこんな顔は見たくない、こんな顔をさせてはいけないというのがこの出来事から得た教訓だったのです。
その後、縁あって三重県多気町に土地と工場を得ることができ、そこで万協製薬を再建することになったのでした。そしてそこで彼は新しい会社経営について考えることに考えることになったのでした。
そして新しい会社では働く人のことを第一に考える。会社の主役は社員なのだ。一番が社員、次がお客様、最後が会社だと言う。社長直行便という提案制度があるのも、岐阜の未来工業と同じだ。万協製薬でも改善案を出すだけで500円もらえるという。社長がいくら頑張っても、一人で年間約1000件の改善点を見つけるのは不可能である。また「ありがとうカード」というのもユニークな制度だ。これは、この人はこんなすばらしいことをしたから、ぜひともほめたいということがあったら、その内容を具体的にカードに書いて提出すると、ほめた人とほめられた人双方に、会社が500円ずつ支給するという制度だ。
有給休暇はできるだけ取らせず、残業は働いた分を正確に申告できない。そんな会社に入って、みんな良かったと思っているのだろうか。万協製薬では残業は一分単位ですべて申告できるようにしており、有給休暇の消化率も80%以上だ。ただし長時間働くことは、ワークライフバランスの関係からあまり推奨できないので、残業が多い人は名前を張り出し、どうしたら減らせるかを本人だけでなく、チーム全体で考えさせるようにしているそうだ。
「障がい者雇用にも力を入れている。障がいのある人が職場にいるとみんなが優しくなれるし、障がい者のほうも、仕事をしながら人の役に立つということを覚えていく。それは彼や彼女が今後社会で生きやすくなるということにもつながっていくはずだ」と松浦さんは言う。
長野県の伊那食品工業、岐阜県の未来工業、そして三重県の万協製薬、三社に共通しているところは社員を第一に考え、会社は社員のためにあると考えているところだ。マルクスの剰余価値説でも価値を生み出すのは労働力であると言っている。その剰余価値を生み出してくれる社員を大事にしない会社は発展しないだろう。
新しい会社のあり方を教えてくる一冊でした。
「人に必要とされる会社をつくる」 松浦信雄著 日本能率協会マネージメントセンター 2012年8月10日発行 1500円+税