「平和ってなんだろう」を読みました(10月2日)
コスタリカはバナナ、コーヒー、タバコなどの一次産品の輸出と観光が国の経済の2本柱です。1940年代富裕層を支持層とする共和党、貧困層を基盤とする人民前衛党、カトリック教会の三者が手を結び政権を握っていました。ところが腐敗と政治不信が募り、1948年の大統領選挙では野党連合のウラテが僅差で当選しました。これに与党が異議を唱え国会は与党の暫定統治を認めました。ところがそれに対し一農園主であるフィゲーレスによる武力革命が起こり、40日間で政府軍に勝利しました。ところが国民の支持はなく、結局フィゲーレスとウラテの話し合いにより、18か月間はフィゲーレスが統治、その後ウラテが大統領に就任するということが決まりました。18か月間にフィゲーレスが主導する統治評議会は制憲議会召集し新しい憲法を作ることになりました。
1948年12月フィゲーレスは軍隊の廃止を高らかに宣言したが、彼の憲法草案は否決されます。そして1949年11月7日、ウラテ派の憲法案が通ったのでした。ところがこの憲法にも軍隊の廃止が規定されており、この憲法の規定が今も続いているのです。
軍隊の廃止を成し遂げたコスタリカですが、そこでは平和というものは民主主義と人権と環境が守られ保障されている状態だと考えられています。刑務所にはコンクリートの壁はなく、医療費の窓口負担はなし、環境を守るために大規模な自然開発はおこなわない、そして女性の地位と権利の向上のために不断の努力がおこなわれています。
消極的平和(つまり、平和の反対の戦争に反対する)ではなく積極的平和(楽しい、うれしい、安らか、愛、幸せ)を求め、また点の平和ではなく線の平和(人間や社会の思想や行動、理念がどちらに向っているかという方向性を考えるもの)を追究していかなければならないという考えです。
平和とは何かについて考えさせられるいい本でした。
「平和ってなんだろう」 足立力也著 岩波ジュニア新書 2009年5月20日発行 740円+税