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「真冬の向日葵」を読みました(12月25日)

「真冬の向日葵」を読みました(12月25日)_d0021786_5433277.jpg2007年9月、財部(安倍晋三をもじってある)が内閣総理大臣と自民党総裁を辞任したところからこの小説は始まる。マスコミ志望の大学生・雪乃を主人公として、2006年財部が総理に就任した経緯、続く福本(福田)政権、朝生(麻生)政権が作られていった内幕、そして自民党が政権の座を明け渡し、民主党政権が誕生するまでのことが小説仕立てで書かれている。

新聞、テレビは真実を伝えていると国民は思わされているが、事実は伝えているが真実は伝えていない。麻生内閣の時、彼が行った経済政策よりも、彼が、漫画が好きで「国立メディア芸術総合センター」を作るという計画が麻生の個人的趣味によるものだとか、漢字の読み間違いをことさらに取り上げ、果ては国会で民主党が漢字の読み方テストを首相に行ったこととか、いつもホテルのバーで飲んでいるとか、カップラーメンの値段を知らないとかいうことを取り上げて連日報道していた。

またこの本の始めの部分に「バンドワゴン効果」について書かれていた。ある選択が多数に受け入れられている、あるいは流行しているという情報が流れた結果、その選択への支持が一層強くなることである。3年前の民主党が政権を取った時のマスコミ報道、そして今回、自民党が294議席を取ることとなった年末選挙中の報道、マスコミが世論調査をおこなって公表したことがさらに自民党に有利に働いたことであろう。

公職選挙法第138条の3では人気投票の好評の禁止が規定されているが、マスコミの世論調査はこれに該当するのではないかと本書では疑問を呈している。

この本はどちらかというと自民党安倍、麻生の政策を支持しているようである。その彼らが今回首相、財務大臣に就任する予定だというので、彼らの経済政策を知ることができる、まさに時宜にかなった内容の本だった。

デフレ脱却のために公共事業を増やすという戦略は財務省官僚には受け入れ難く、今後財務省官僚との確執が繰り広げられることになるのではないか。

また、この本では中川昭二元財務相がイタリアでおこなった、いわゆる「酩酊会見」についても詳しく書かれている。事件直後からインターネットでは「おかしい」という意見が出ており、あれは自分たちの意向に沿わない中川財務相を追い落とすために財務官僚が仕組んだのではないかと言われている。さらにその後のバチカンの博物館で立入禁止区域に入り込んだとか、展示物に触って注意されたとかいう報道もウソらしく、通訳として同行したバチカン放送局の神父和多真氏によって否定されているが、そのことは一切マスコミでは取り上げていない。

政治の内幕とマスコミによる世論操作について書かれた興味深い本でした。私たちはマスコミ報道をそのまま鵜呑みにするのではなく、彼らがどういう意図で国民の意識をどう変えようとしているのかを見抜く力をつける必要があると思わせる一冊でした。せっかくインターネットがあるのだから、自分でいろんな情報を探し、それを発信することも日本のマスコミに対するささやかな抵抗ではないか。

この本を読み終わって、ちょっと残念だったのは、マスコミによる世論の操作を背後で行っている勢力が誰かはっきりしなかったことです。彼らは手を変え、品を変え自分たちに都合のいいように世論を作っていくことに長けており、また権力も持っているのだから。でもそこまで書くと本の出版さえも潰されるのかもしれませんね。

「真冬の向日葵」 三橋貴明、さかき漣著 海竜社 2012年9月19日発行 1500円+税
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by irkutsk | 2012-12-25 05:43 | | Comments(0)