「夕映え天使」を読みました(3月18日)
一郎が父親とふたりでやっているあまりはやらないラーメン屋に、突然住み込みで働かせてくれとやってきた純子と名乗る40ばかりの一人の女。数カ月働いたあとふいっといなくなった。そして彼女がいなくなって1年後の正月四日に、軽井沢警察署から電話がかかってくる。身元不明の女性の遺体があり、彼女の所持品の中におたくの店のマッチがあったので何か知っているかと思って電話したという。
一郎は取るものもとりあえず、新幹線で軽井沢へ向かう。そして警察の前に着くと風体のよからぬ男が警察の玄関に座り込んでいる。大阪のうどん屋のおやじだというその男の話によると純子は一郎の店を出たあと大阪へ行き下島と名乗る男のうどん屋で同じように住み込みで働かせてくれと頼んで、しばらく働いという。そしてやはり突然いなくなった。
大阪ではちよ子という名前だったらしい。身元がわかるものは一切なかったが、大阪のうどん屋の名刺と、一郎のラーメン屋のマッチだけを身につけて死んでいたという。
「切符」では昭和30年代の東京の下町に住む少年の物語。両親が離婚し、少年は祖父に引き取られていた。映画「三丁目の夕日」の世界が蘇る短編だ。
ほかの作品も素晴らしい作品だった。
「夕映え天使」 浅田次郎著 新潮文庫 2011年7月1日発行 476円+税