「天と地の守り人(第一部)」を読みました(10月11日)
この本のシリーズの主人公は北の大陸の中でも北に位置するカンバル王国出身の女短槍使い・バルサだが、もう一人の主人公とも言えるのが、新ヨゴ皇国の皇太子・チャグムだ。前作「蒼路の旅人」でチャグムはタルシュ帝国のラウル王子の密偵ヒュウゴに捕らえられていたが、隣国ロタ王国とカンバル王国に同盟を求め3カ国で協力してタルシュ帝国と戦うしか勝ち目はないと考え、船から脱出したのだった。
新ヨゴ皇国ではチャグム皇太子は死んだとして、第二皇子トゥグムが皇太子の地位に就いた。そして帝はタルシュ帝国の侵攻に備えて草兵を各村から集め、要塞を各地に築き、スパイ防止のために鎖国政策を取った。隣国であるロタ王国やカンバル王国への援軍要請もしなかった。
タルシュ帝国の新ヨゴ皇国侵略はラウル王子に任されていたが、長男のハザール王子はそれよりも先にロタ王国を落とそうと企んでいた。ロタ王国は国王が病に倒れ、弟のイーハンが国王の代理をしていたが、彼は北の住民には人気があるが、裕福な南の領主たちからは嫌われていた。そしてタルシュ帝国はそこに付け入り、南の領主たちをそそのかし、彼らを援助して王を追い落とし、ロタを枝国にしようと企んでいた。
そんなこととは知らず、船から脱出したチャグム皇子は、ロタ王国の南の領主のところへ行き、軟禁されてしまう。しかしそこの娘が、うっかり彼を庭へ出したために、チャグムは領主のところから逃げ出すことに成功する。そしてロタ国王の下へと向かう。彼を追う追っ手が放たれる一方、ロタ王国の王を守るカルシャと呼ばれる親衛隊のような組織はチャグムを王の下へ送り届けようとする。
バルサはロタ王国のカルシャの頭領アハルのもとまで行ったが、そこでチャグムの手紙を受け取り、彼がもう十分大人になったことを知り、ツーラムへ戻った。ところがひょんなことからタルシュの密偵・ヒュウゴを助けたときに傷の手当に使った布を解くと、びっしりと細かい字が書かれていた。そこには「チャグム殿下を殺すためにタルシュ帝国の<南翼>の刺客が放たれた。殿下は見てはならないカンバル人の顔を見てしまったらしい。<南翼>の連中にとってはカンバル侵略の糸口を断ち切られる危険だ。なんとしてでも、殿下を殺そうとするだろう」と書かれていた。
バルサはチャグムを助けるために彼の後を追うことを決意し、馬を飛ばすのだった。果たしてチャグムを守ることができるのか?
この話を読んでいるとやはり南の大陸の強大なタルシュ帝国がアメリカに思われてきます。そして日本はアメリカの枝国です。枝国日本の支配者は国民の幸福よりもアメリカの利益を優先し、多くの国民を苦しめています。
「天と地の守り人(第一部)」 上橋菜穂子著 新潮文庫 2011年6月1日発行 590円+税