「ヴァイブレータ」を読みました(12月18日)
とりあえず原作を読んでみようと思って図書館で借りてきて読んでみた。映画よりはわかったが、なんともやりきれない内容だった。
主人公の早川玲が中学生のとき、国語教師にラ変、サ変の活用を言わされるのだが、あるとき反射的に言えていた活用が言えなくて、そこの部分だけが真っ白になって思い出せない。
そして社会に出てからも自分というものがなくなってしまう。フリーライターとして拒食症、多食症、食べ吐きの少女を取材し、自分も食べ吐きをするようになる。「食べ吐きは三度美味しい。食べて美味しく、吐いて痩せて、しかもぐっすり眠れる」そうだ。
そして中学の頃から聞こえてくるもうひとつの声。
夜のコンビニで出会ったトラック運転手岡部を求める。「食べたい、食べたい」「取らなくちゃ。行かなくちゃ。取らなくちゃ。行かなくちゃ」。そして彼の後を追い、彼の運転するトラックに乗り込む。
トラックの中でセックスし、彼と新潟まで行き、東京へ戻り、また新潟へ、そして東京へ帰る途中で話は終わる。早川玲は人とつながることができなくなっていて、それを岡部との肌のふれあい、トラックという外界から閉ざされた空間で過ごすことによって少しずつ自分を取り戻していく。このどうしようもない早川玲を救ったトラック運転手・岡部に拍手を送りたい。
やはり映画では表しきれないものがたくさんあったような気がする。心の中のイメージを映像化するというのはなかなか難しいものだ。
この後、早川玲はどうなったのだろうかと気になる。あまり明るい方向へは進めないようだが…。
「ヴァイブレータ」 赤坂真理著 講談社文庫 2003年1月15日発行 381円+税