安倍首相の靖国神社参拝に思う(12月27日)
しかし、彼は就任当初、歴史問題の見直しを公言し、内外の批判を浴びたのを忘れてしまったのだろうか。
戦後70年がたとうとしているが、現在の世界は1945年の第二次大戦終結後の体制がずっと続いているのである。連合国側(アメリカ、イギリス、ソ連、フランス、中国)が主導した東京裁判、領土確定、国際連合、NPT(核拡散防止条約)などなどが現在の世界を支配しているという現実を安倍首相は全然認識できていないのではないか。
国連で拒否権が与えられているのは戦勝5カ国、NPTで核兵器の保有を認められているのも戦勝5カ国。これらの現実の良し悪しを問われれば、どう考えても戦勝国のエゴでしかなく、納得できないものである。だからといってその体制に反旗を翻し、見直そうとすることは過去の戦争の結果をなかったものにしようとする無謀な策略である。だからこそアメリカ、中国、韓国はいっせいに批判を始めたのである。
国内的には1945年の敗戦をなかったものにして、その体制を覆したいという想いを吐露することは勇ましく見え、ナショナリズムを盛り上げるかもしれない。しかし、国際関係という点から見るとアジアで、そして世界で孤立していくという、かつて歩んだ道をまた進み始めたという観は否めない。アメリカの力が低下してきたとはいえ、世界最大の軍事国家である。アメリカに押しつけられた憲法を改正し、歴史問題を見直し(日本は悪くなかった、あるいは悪いのは日本だけではないという考えを対外的に公言すること)ていくという自民党や安倍政権の思いは、歴史に学ばない同じ過ちを繰り返そうとするものである。
日本が自立することは必要だが、孤立することはかつて満州国建国が承認されず、国際連盟を脱退し、無謀な戦争へと突き進んでいった歴史を繰り返すことになる。
安倍首相にこそ国際化とは何なのか、今一度考え直して欲しいものだ。