「ちいさいおうち」を読みました(1月31日)
いなかのしずかなところにあった ちいさいおうちは ながいあいだ おかのうえから まわりのけしきを ながめて、しあわせに くらしてきました。
ところが ある日、いなかの まがりくねったみちを、うまの ひっぱっていない くるまが はしってくるのを みて、ちいさいおうちは おどろきました。
そして ひろいどうろが できあがりました。ちいさいおうちの まえを たくさんのじどうしゃや とらっくが まちまで いったり きたり するようになりました。
それからあとも はたけの なかに、あたらしい どうろが、あとからあとからと できました。
よるになっても、あたりは しずかになりません。
そのうち、ちいさい おうちの まえを でんしゃが いったり きたり しはじめました。
そのうち、ちいさいおうちの まえを、こうかせんが いったり きたり するように なりました。
そのうち こんどは、ちいさい おうちの したの じめんの なかを、ちかてつが いったり きたり するようになりました。
そのうち おおぜいの ひとが やって きて、ちいさいおうちの まわりの あぱーとや こうだんじゅうたくを とりこわして、りょうがわに おおきな ちかしつを ほりはじめました。
さあ こうなると、ちいさいおうちに お日さまが みえるのは、 おひるのとき だけでした。そして、よるは お月さまも ほしも みえません。
ところが、ある はるのあさ、おとこの子と おんなの子をつれた おとこのひとと おんなのひとが ちいさいおうちのまえを とおりかかりました。そのひとは このいえを たてたひとの まごの まごの そのまた まごに あたるひとでした。
「あのいえは、おばあさんが ちいさいとき すんでいた いえに そっくりです。でも そのいえは ずっと いなかにあって、おかには ひなぎくが さき、りんごの木も うわっていました。」
けれど、しらべてみると、そのちいさいおうちは、やはり、おばあさんが すんでいた いえだったのです。そこで、そのひとたちは、けんちくやさんに ちいさい おうちの ひっこしを たのみました。
けんちくやさんは ちいさい おうちを あっちの ばしょや こっちの ばしょにおいてみました。そのうち、ひろいのはらの まんなかに ちいさなおかが みつかりました……。まわりには りんごの木も ありました。
ちいさいおうちには また ひとがすみ、めんどうを みてくれるように なりました。
ちいさいおうちは もう二どと まちへ いきたいとは おもわないでしょう……
もう二どと まちに すみたいなどと おもうことはないでしょう……
ちいさいおうちのうえでは ほしが またたき ……
お月さまもでました……
はるです…
いなかでは、なにもかもが たいへん しずかでした。
「ちいさいおうち」 バージニア・リー・バートン文・絵 石井桃子訳 岩波の子どもの本 1954年4月15日 640円+税