「銃・病原菌・鉄」(下)を読みました(2月11日)
第13章「発明は必要の母である」では「必要は発明の母である」というのは錯覚で、多くの発明は人間の好奇心の産物である。有用な発明は一つの社会から別の社会に二つの方法で伝播する。一つはその発明を目撃したり、教わったりした社会が、それを受容、受け入れ、もう一つはその発明をもたない社会が、自分たちが不利な立場に立たされていることを認識して、その発明を取り入れるかである。発明や技術は伝播によって取得されるが、地理的要因が伝播に影響を与える。
第14章「平等な社会から集権的な社会へ」では社会がどのように大きくなっていったかが述べられている。最初は5~80人程度のメンバー全員が血縁関係にある小規模血縁集団だった。次に数百人規模の部族社会となる。定住生活をしていることが多く、誰もが皆の名前と自分とどういう関係にあるかを記憶している。平等的社会的で、官僚システム、警察システム、税金はない。次に現れてくるのは首長社会で規模は数千人から数万人。官僚システムを有し、首長は平民から受け取った物品をすべて再分配せず、手元に置くようになった。それは公共事業に使われたり、首長だけの利益になることもあった。
平民より上等な生活を堪能しながら、彼らの間で不人気にならないためにはどうしたらいいか。
1、民衆から武器を取り上げ、エリート階級を武装させる。
2、集めた多くの富を民衆に人気のあるやり方で再分配する。
3、独占的な権力を利用して、暴力沙汰を減らし、公共の秩序を維持して、民衆が安心して暮らせるようにする。
4、民衆の支持を得るために、イデオロギーや宗教でエリート階級の存在や行為を正当化する。
そして国家になると規模も10万人を越えるようになり、複雑な官僚制度、法律、司法、警察、宗教を持つようになる。
社会が大きくなる原動力は食料生産の増大で、それが人口を増加させ、複雑な社会を作っていく。そしてさらにそれが食料生産を増大させるという循環になる。
第15章「オーストラリアとニューギニアのミステリー」ではどうして二つの地域が発展しなかったのかについて考察されている。
第16章「中国はいかにして中国になったのか」では、最も早く統一され、技術が進歩したのはどうしてかが考察されている。
第17章「太平洋に広がっていった人々」ではオーストロネシア人(オーストロネシア語族の人々)が中国本土を出発点とし、インドネシア、ニューギニア、太平洋の島々に広がっていった様子が書かれている。
第18章「旧世界と新世界の遭遇」ではどうしてユーラシアがアメリカを征服し、アメリカ先住民は旧世界を征服できなかったのかについて考察されている。
エピローグで著者は環境の相違が社会の発展に大きな影響を与えたといっている。また肥沃三日月地帯はかつて森林におおわれていたが、開墾や燃料用、建築用、加工用として伐採され、砂漠化していった。また、中国では1405~1433年まで7回行われた船団派遣が宮廷内の権力争いの結果中止となり、造船所が解体され、外洋航海も禁止されたのがヨーロッパ諸国に遅れをとった原因だと述べている。
最後に「あなたがた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜだろうか」というヤリの問いかけに、ジャレド・ダイアモンドはこう答えるといっている。「人類のながい歴史が大陸ごとに異なるのは、それぞれの大陸に居住した人々が生まれつき異なっていたからではなく、それぞれの大陸ごとに環境が異なっていたからである」。
人類史を見る上で、環境のもたらした影響が大きかったという本です。現在も住んでいる環境によって人々の生活には大きな差があります。「グローバル化」というのはお金儲けの面でだけ使われていますが、本当の意味のグローバル化は世界の富をみんなで分け合おうということではないだろうか。
「銃・病原菌・鉄」(下) ジャレド・ダイアモンド著 倉骨彰訳 草思社 2000年10月2日発行 1,900円+税