「日本の選択 あなたはどちらを選びますか?」を読みました(3月3日)
第1章消費税の増税に賛成?反対?
第2章これからの社会保障は高齢者重視?次世代重視?
第3章これからも“安くていいもの”をつくり続けますか?
第4章領土問題は強硬に?穏便に?
第5章日本維新の会に投票しますか?しませんか?
第6章大学の秋入学に賛成?反対?
第7章教育委員会制度は存続?廃止?
第8章原発ゼロに賛成?反対?
第9章どうする、選挙制度改革。一票の格差を許せますか?
第10章がれきの広域処理は受け入れるべき?断るべき?
第1章では、日本の税収40兆円の内訳を明らかにし(消費税10.2兆円、所得税13.5兆円、法人税9.3兆円)、90兆円の歳出のために毎年大量の国債を発行しているという現実の下で、どうするのかを問うている。増税反対派の意見も書いてあるが、それへの反論も書いてあり、筆者は増税に賛成なんだなと思わせている。復活した公共事業に対する批判はしているが。
第2章では、社会保障がどうして今のような危機的状況に陥ってしまったのかについて、年金の積立方式から賦課方式への転換、少子高齢化が予想を超えて進んだ、積立金の利回りの設定ミス、資金運用の失敗(株)などをあげている。そして社会保障制度は払った分だけもらうという性質のものではなく、「社会全体でお互いを支えあう仕組み」だと筆者は言っている。
私の意見は老人が暮らしていくのに必要な費用は人によってそんなに差はないので、年金の支給額に上限を設けるとか、医療費の自己負担額を引き上げ、生活困窮者は無償化するとか、低賃金の是正(派遣制度の廃止)などを行うべきだと思う。企業が儲ける一方で、社会的負担を免れ、国に社会保障を押しつけるという現在のあり方を改めるべきである。
第7章、教育委員会制度の存廃についてでは、次のように解説している。1945年にアメリカが国家による教育統制を排除するために設けた教育委員会制度は直接選挙で教育委員を選出し、予算の権限や人事権も持っていた。しかし1956年、この制度は日本にふさわしくないということで、教育委員は首長による任命制にされ、予算を作る権限も人事権も奪われ、市町村教育長の任命には都道府県教育委員会の承認が必要、都道府県教育長の任命には文部省の承認が必要となり、教育委員会の議論の公開の義務もなくなった。
私の考えでは、このように制度が形骸化してしまったことが問題であるのに、現在の政府・文科省はより政府統制を強める形で教育委員会制度を「改正」使用としているのは、歴史の教訓を踏まえず、再び教育の国家統制に道を開く危険なものであると言わざるを得ない。
10のテーマについて書かれているが、それぞれのテーマで1冊の本が書けるような内容なので、やや物足りなさを感じる。
「日本の選択 あなたはどちらを選びますか?」 池上彰著 角川oneテーマ21 2012年12月10日発行 781円+税