「新幹線お掃除の天使たち」を読みました(3月15日)
この人たちが働いている会社はJR東日本の下請け会社「テッセイ」です。最初からニュースで取り上げられるような会社ではありませんでした。JR東日本東京支社の運輸車両部指令所担当部長だった矢部さんがテッセイに着任してから変えてきたのでした。平成17年7月1日に彼が着任したとき、現場を回ると与えられた仕事はきちっとする=それ以上のことはやらないし、求められてもいなかった。職場にもいまひとつ元気がなく、「自分たちはしょせん清掃員」という意識がどんよりと蔓延していた。
彼は十数部屋ある職員の待機所にエアコンを4台ずつ設置しました。清掃業務という身体を動かす大変な仕事なのに、休息する場所が快適でないなんて…。これでは仕事に支障をきたし、気分も盛り上がらないのは当然だと考えたのです。
その後もシンプルでわかりやすい組織にしたり、正社員への登用制度を変更したりしました。それまでは正社員採用試験は45~58歳でなければ受けられず、若い人たちは正社員になれませんでした。また現場長の推薦がないと試験は受けられませんでした。それを20歳以上でパート経験が1年以上あれば現場長の推薦がなくても正社員採用試験が受けられるようにしました。
従業員のよい取り組みの具体例を示し、それを実践した人をほめる制度として、平成19年4月から「エンジェル・リポート」の取り組みが始まりました。現場リーダーである主任たちが業務運営だけでなく、スタッフのよいところを探し、ほめるという制度です。たとえ小さなことでも、ちゃんと気付いて、ほめてあげることが、個人の成長にとっていかに大切かということです。そして月間、半期、年間でできるだけ多くのスタッフを表彰しました。月間表彰は1,000円、半期表彰は5,000円、年間表彰は3~5万円もらえます。
いい会社にするためには社員を大切にしなければならないというのが原則です。経営者と社員の間に信頼関係があれば、そして社員のことをきちんと考え、それなりの待遇をすれば、社員はその信頼に応え、決められた仕事以上の仕事をするということです。
「新幹線お掃除の天使たち」 遠藤功著 あさ出版 2012年8月28日発行 1400円+税