人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ロシアとMacと日本語 irkutsk.exblog.jp

関心のあるいろんなこと書きます


by irkutsk
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

「9条どうでしょう」を読みました(5月19日)

「9条どうでしょう」を読みました(5月19日)_d0021786_18192582.jpgこの本は2006年3月に毎日新聞社から出されたものを文庫として発行されたものである。

内田樹は次のように語っている。
法律とは「よいことをさせる」ためではなく「悪いこと」をさせないために制定されている。これを憲法9条に当てはめてみると、憲法9条は戦争をさせないために制定されている。人間は放っておけば必ず戦争をするからである。どうやったら戦争をさせないようにできるか。戦力を持たせないことだ。しかし、日本はもう戦力を持っている。では戦力をできるだけ使わないためにはどうするか。

人を殺しても良い条件を確定した瞬間、「人を殺してはならない」という禁戒は無効化してしまう。これと同じことが戦争にも適応できる。

自衛隊と憲法9条はというアメリカによって作られたこの二つは相互に支えあっており、「戦争ができない軍隊」を持ち60年間戦争をしないできた。おかげでみごとな経済成長、効果的な法治、民生の安定を成し遂げた。

日本はアメリカに戦争で負け、アメリカの従属国となる以外生き延びる選択肢がなかった。憲法9条と自衛隊が無矛盾的に共存している。つまりアメリカにとって軍事的に無害であり、かつ有用である国。つまりアメリカの従属国である。この事実に戦後の日本人は国民的規模で目を背けたし、アメリカも「従属国の国民」という現実を直視させないことが占領政策にとっても適切であった。強権で支配することは反米・共産化のおそれがあった。

普通の国になるとはどういうことか。もし改憲して9条が廃止されても、軍事をめぐる事情は今と少しも変わらない。自衛隊の行動は1から10まで米軍の許諾を得てしか行われない。アメリカは日本の主体的軍事行動を決して許さない。9条が廃止されれば、米軍は国防予算の増額を要求し、米製の高額な武器を購入させ、日本はアメリカが始めた戦争の最前線に狩り出される。「普通の国」になったはずのまさにそのときに、アメリカの従属国であるという否定しがたい事実に直面するだけだ。「普通の国」になるとは「奴僕の国」であるということをやめるということ。つまりアメリカを含むすべての国と戦争をしたいときには戦争をすることができる権利を留保することである。つまり、「普通の国」になったら、日米安保条約の廃棄、駐留米軍基地の返還要請、核兵器開発をすることになる。これができなければ日本の「従属国」的本質は改憲によって少しも変わらない。

あとの3人の意見も聞くに値する内容だ。単に9条を守れ、自主憲法の制定をという単純な主張ではなく、現実を見据えたしっかりとした主張である。改憲が難しいとみた安倍内閣は解釈改憲で事実上の改憲を成し遂げようとしている。憲法9条について考えることができる良い本です。

「9条どうでしょう」 内田樹、小田嶋隆、平川克美、町山智浩著 ちくま文庫 2012年10月10日発行 680円+税
名前
URL
削除用パスワード
by irkutsk | 2014-05-19 18:19 | | Comments(0)