「獣の奏者Ⅲ(探求編)」を読みました(6月3日)
そんな平和な3人の生活を打ち破る出来事が始まったところから第3巻は始まった。大公シュナンからの呼び出しを受け大公城へ着くと、シュナンからトカラ村の<牙>が全滅したという報告が入ったので、その原因を調べてきて欲しいということだった。シュナンの側近で、かつては最高位の闘蛇乗り<黒鎧>を務めていた武人・ヨハルとともに出発した。
調査の末、死んだ<牙>はすべて雌で、卵詰まりによる内臓の壊死だということが分かった。それは<牙>を強くするために与えられていた特滋水が原因だということが分かった。
エリンはヨハルに最古の闘蛇村・ウハンへ行かないかと誘われて行くことにした。ところがその村で、エリンとヨハンは<血と穢れ>と思われる者達に襲われる。必死の思いで闘蛇に乗って川を下って逃げ延びた二人だった。<血と穢れ>は真王がこの国を分裂させた元凶であると主張し、大公をこの国の唯一の統治者にと望んで、真王の暗殺を試みてきた組織だ。
そして二人を襲ったメンバーの一部がつかまり、なんとそのメンバーには異国人が含まれていて、命乞いのために情報を売りたいといっているという。その男の話によると、かつて闘蛇乗りをしていたウハン村の頭領の弟が8年前に突然行方不明になったのは、アシェにさらわれ、そこで闘蛇を飼育し闘蛇部隊を作っているらしいということだった。
一方、都で母の帰りを待っていたカイルとジェシの身の上にも大変な事件が起こっていた。ラーザ国の密偵にカイルが襲われていた。だが怪我を負いながらも何とか彼らを撃退したカイルはジェシを連れて逃げる。
エリンは真王セィミヤに闘蛇の天敵である王獣を増やし、王獣部隊を作るようにとの命令を受けるがそれを断る。そしてエリンの気持ちを汲み、真王はそっとエリンを逃がしてくれた。だが、彼女は指名手配され、逃げる運命に。そしてカイルとジェシと再会することができるが…。
今回も息をもつかせぬストーリー展開で、ハラハラドキドキでした。そして何よりも人の手で闘蛇や王獣を支配し、自分たちのために使うということを良しとしないエリンの気持ちが随所に現れていました。ところがそうもいっていられない事態が迫ってきたのです。第4巻完結編が楽しみです。
「獣の奏者Ⅲ(探求編)」 上橋菜穂子著 講談社文庫 2012年8月10日発行 752円+税