人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ロシアとMacと日本語 irkutsk.exblog.jp

関心のあるいろんなこと書きます


by irkutsk
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

「脱グローバル論」を読みました(7月8日)

「脱グローバル論」を読みました(7月8日)_d0021786_1356404.jpg現代ビジネス主催のシンポジウム「ポストグローバル社会と日本の未来」の4回にわたる記録をまとめたものです。

今、グローバル社会がどんどん進行し、生身の人間にとっては非常に住みにくい世の中になりつつありますが、このシンポジウムではさらにその先、ポストグローバル社会について論じられています。内田氏が最初のところで、「恐竜が天に向かって吠えている足元で、小型の哺乳類獣が「次の時代」に備えて適応の準備を始めている」と表現しているように、目先の現実ばかりを見ていると恐竜にすべてを踏み潰され、食い尽くされているような気になりますが、新しい時代はちゃんと芽吹いているということをこの本を読んで確信できました。

第1回では、「グローバル社会VS国民国家のゆくえ」(2012.7.19)と題して、グローバル資本主義とは何かということについて話されています。内田氏は次のように言っています。「企業の収益をあげるためなら、国民国家なんてどうなってもいい。要はそこに投資し、経営している個人の個人資産の増減だけが問題、国益は考慮の外である。」「グローバル資本主義は世界市場のフラット化を求めている。超高速で資本・商品・情報・人間が行き交う状態が理想。スピードへの固着はグローバル資本主義の病態の一つ。生物としての快適なスピードでものごとが出来(しゅったい)すれば、僕たちはそれでいい」。

第2回では「おじさんたちと若者たちとの対話」(2012.10.18)で、イケダハヤト氏と高木新平氏を迎えて、若者の生き方をおじさんたちが聞き、それがグローバリズムに対抗する有効な手段であると話しています。内田さんは次のように言っています。「顔の見える小さいコミュニティーをベースに、その中で基本的には物々交換、手間手間交換をして、できるだけ貨幣を介在させないで、生活のクオリティを上げていくことじゃないかと思っている。」「今の若い人たちは「もっと金をよこせ」ではなく「金がなくても、質の高い生活ができるためにはどうすればいいか」を考えている。あらゆるものが貨幣に換算され、ゼロサム的な競争に狂奔しているグローバル資本主義の中で、固有名詞をもった個人たちが、社会的弱者を支援するための相互支援、相互扶助の社会システムを設計しようとしている」。

第3回では「衆院選直前!「政治」について考えよう」(2012.12.3)で、自民党が大勝した衆院選を前にして行われました。この中で内田氏は「日本のシステムそのものに大きな問題があるわけじゃない。システムと言うのは、どうせこの程度のもの。問題はそれを操作している人間の質が劣化してきていること。子どもでも運転できるくらいに安全なシステムを作りこんだのは戦後日本のすばらしい達成。でもそのシステムの出来がよかったせいで、結果的に日本人はどんどん幼児化していった。システムの問題ではなく、システムを管理運営している人間の出来の問題」と言っている。

第4回「新しいジモト主義が日本を救う」(2013.2.26)では内田氏は次のように言っている。「エコノミストは寿命5年の生物」。だから「待ったなし」でものごとを進める。国民国家は寿命100年の生物。人間と同じ寿命のシステムのそばにいると気が休まる。国民国家というのは、親族を地域共同体、さらには国家へと量的・水平的に拡大していった制度ですけれども、幻想的には「拡大家族」です。だから列島に住む1億3000万人を、幼児や病人や働きのないなまけ者も含めて、身内をどうやって食わせるかということが国民経済の根本的な発想になる。→生身の人間のサイズ。しかしグローバル資本主義は「人間じゃないもの」をベースにして制度を作る。時給800円で1日14時間働いて、3か月休みを取らない労働者。あれもこれも、人がもっているものはみんな欲しがって、一生かかっても返せない借金を抱え込んでも買い物する消費者。そういう人ばかりでできている世界がグローバル資本主義の理想。でも生身の人間は80年間そういうふうには生きられない。」

「脱グローバル論」 内田樹、中島岳志、平松邦夫、イケダハヤト、小田嶋隆、高木新平、平川克美 講談社 2013年6月10日 1400円+税
名前
URL
削除用パスワード
by irkutsk | 2014-07-08 13:56 | | Comments(0)