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「あとかたの街」を読みました(8月17日)

「あとかたの街」を読みました(8月17日)_d0021786_11184571.jpg先日読んだ「凍りの掌」の著者・おざわゆきさんがお母さんの体験を聞いて書いた名古屋大空襲の物語です。

太平洋戦争末期の昭和19年の名古屋。優しい父と強い母、そして四姉妹の女系家族。木村家次女の“あい”は女学校へ行きたかったが、家が貧乏なため高等科へ行かざるを得なかった。

青春真っ只中にいる“あい”の関心は、かっこいい市電の車掌さんや、今日の献立のこと。自分が戦争に参加しているなどという気持ちは、これっぽちもなかった。しかし、米軍にとって名古屋は、東京や大阪と並んで重要攻撃目標だった。

本書は6話からなっており、第一話「一番鶏」では卵の話。お父さんが卵を1個もらってきて、それをお母さんが卵焼きにして、お父さんが一口食べ、残りを子供たちに残してやった。その卵は近所の波多野さんのうちで昨日葬式(ご主人が戦死して遺骨で帰ってきた)があって、飼っていた鶏の卵だったということが後でわかり、“あい”は波多野さんのうちへ行くのだった。

やがて妹の“とき”が岐阜県へ学童疎開に行くことになり、彼女のために服を準備してやるのだが、布地もなくお父さんの新しい上着をくずしてかわいい上着を作ってやったのだが、洗うとぼろぼろになってしまい、結局座布団やらなにやらの布をつぎはぎで作リ直すことになった。

やがて“あい”の通う国民学校高等科は授業を中止し、勤労動員で工場で働くことになる。姉は縫製工場で、“あい”は飛行機工場でビスの不良品を取り出す仕事で、小さなビスを一日中見つめて働くことになった。

そして名古屋の空に、米軍の飛行機がやって来た。
第一巻はここで終わり。第二巻は10月10日発売です。

戦争を実感として知らない世代、戦争を想像できない世代が増えてきて(もちろん安倍首相もその一人だが)、戦争をゲームや他人を攻撃することで自分の不満を発散させることぐらいにしか思っていないという状況が進行する中で、このような戦争中の庶民の生活がどうだったのかを事実を元に漫画という若者にもとっつきやすい媒体で紹介するのは大切なことだと思う。第二巻の発売が待たれる。

「あとかたの街」 おざわゆき著 講談社 2014年6月13日発行 580円+税
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by irkutsk | 2014-08-17 11:19 | | Comments(0)