「内田樹の大市民講座」を読みました(12月8日)

d0021786_17532222.jpg「AERA」に2008年から連載されていた900字コラムを1冊の本にまとめたものです。6つのカテゴリーに分類して掲載しています。2011年3月11日の東日本大震災を挟んだ6年間の日本を内田樹がどう見ていたのかがよくわかります。

「あとがき」で「900字のコラムは書くのにいささか工夫がいる」と書いており、ツイストを効かせた文を書くことだと言っている。「ツイストを効かせる」とは例えば「音楽を論じていて、政治とか経済とか歴史とかに話の水準が移って、そのレベルから当該論件を眺めると、ふだんとは違う相貌が浮き立ってくるようにすること」であるそうだ。

2012年12月17日のコラムには自民党が政権の座に返り咲く選挙の前に書かれているが、内田氏は「民主党が政権の座から転落することは確実だが、自民党が過半数を取れるとは思わない」と言っている。彼の予想に反して、自民党は大勝し、その勢いに乗って安倍は憲法改正を声高に言いはじめ、靖国に参拝し、アメリカに叱られ、「秘密保護法」の制定と、集団的自衛権の行使の憲法解釈の変更によって実質改憲を実現した。

そして今、何を思ったのか任期を2年残して、衆議院を解散し選挙を行っている。マスコミの報道によると与党で300議席超えかとも言われている。もし、改めて300議席以上をとると彼は次に何をやろうとするのだろう?

2年半前の消費増税法案が可決された後に書かれたコラムでは、「この不況下での増税が政府の思い通りの成果を生むだろうか。国民の絶対的貧困化が進むだけではないのか。低所得者ほど税負担が重くなる逆進性については、「ベーシックインカム」とか「軽減税率」とかぼそぼそと言われているが、さっぱり具体的にならない。その一方で、企業は法人税率と人件費の引き下げを強く要求している。要求が満たされなければ、生産拠点の海外移転は止まらず、雇用は失われ、地域経済は崩壊し、国庫の法人税収は激減するだろうと脅す」と書かれているが、不幸なことにこの予想は的中してしまった。

彼は人々の「市場からの自主撤収」が始まり、「賃金ではない報酬」「商品というかたちをとらない財貨やサービス」を求め始めるだろうと書いている。

一つ一つは短いコラムであるが、その内容は示唆に富むもので、繰り返し読んで自分の頭を鍛えることができたらと思う一冊だった。

「内田樹の大市民講座」 内田樹著 朝日新聞社出版 2014年11月30日発行 1300円+税
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by irkutsk | 2014-12-08 17:52 | | Comments(0)