「日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか」を読みました(1月16日)
日本の中で米軍機は自由に日本の空を飛びまわることができ、住宅地の上を低空飛行することも許されている。また首都圏上空に横田空域という米軍専用の空域が設定され、羽田から西へ向かう日本の飛行機はいったん東へ飛んだあと、この空域の上に出るために急転回、急上昇して飛んでいる。また日本国内で米軍機が墜落しても、日本側は指一本触れることはできない。このような現実はどうして今も続いているのか。それは安保条約に基づく条約や協定が日本国憲法よりも上位に位置しており、アメリカの占領は70年たった今も続いていると言わざるを得ない。
2009年9月民主党鳩山政権が誕生したが、普天間基地の移転問題で、首相の足を引っ張ったのは「選挙で選ばれた首相・鳩山」に忠誠を誓わず、「別の何か」に忠誠を誓っていた官僚たちであった。月2回開催される日米合同委員会(外務省北米局長をはじめとする各省庁から選ばれたエリート官僚と在日米軍トップで構成されている)で合意、密約など膨大な取り決めがなされている。これらの合意や密約は公表されない。またこの委員会のメンバーになると皆めざましく出世している。官僚たちは首相にではなく、安保法体系に忠誠を誓っているのが日本の現実なのだ。
また日米安保条約の下では日本政府とのいかなる相談もなしに米軍を使うことができる。米軍の部隊や装備なども地元当局への事前連絡なしに日本への出入りを自由に行う権限がある。日本政府は、現在日本国内にどういうアメリカ人が何人いるか全く把握できていない。米軍基地を通じての入国はノーチェックだからである。
戦後日本は占領終結後も国内に無制限で外国軍(米軍)の駐留を認め、軍事・外交面での主権をほぼ放棄してきた。その見返りに大きな経済的利益を手にした。冷戦時代はこの矛盾も目立たなかった。
砂川裁判では、「安保条約のような我が国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度な政治性を有する問題については憲法判断をしない」とした。この統治行為論を、政府は基地問題以外にも使い始めるようになった。官僚たちが「わが国存立の基礎にきわめて重大な関係を持つ」と考える問題は、自由に治外法権状態を設定できるような法的構造が生まれてしまった。そのような状況で、原発再稼働が進められようとしているのである。
原発事故で大変な環境破壊をおこなったにもかかわらず、誰も罰せられない。放射性物質は汚染防止法の適用除外だったのである。福島の事故後、大気汚染防止法、水質汚濁防止法の放射性物質適用除外の規定は削除された。ほかの汚染物質と同じく「政府が基準を定め」「国が防止のための必要な措置をとる」こととなったのである。しかし肝心の基準が決められていないし、政府が恣意的に基準を作ることができるようになったのである。
戦後70年を経て、日本の政治家や官僚が日米安保体制の下にしっかりと組み込まれ、国民の利益よりも、米軍の利益を最優先している現実が今の日本だ。アメリカによる日本占領はいまも続いていると考えた方がいい。
「日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか」 矢部宏治著 集英社インターナショナル 2014年10月29日発行 1200円+税