「日本の奈落」を読みました(1月19日)
また「世界的な規模で格差拡大が進んでおり、所得の高い階層への所得配分が増加すると、経済全体の消費性向が低下してしまう。格差拡大は、経済全体の需要不足を拡大させる形で、需給の不均衡をもたらし、経済停滞の原因になる」と言っている。
法人税減税については、大企業を優遇し、国民に負担を強いる経済政策である。法人税だけを取り上げるのでなく、社会保険料を含む企業の負担としてみると、日本は決して高くなく、イギリスに比べると高いが、アメリカとは同水準、どいつ、フランスに比べると大幅に安いそうだ。
小泉政権は派遣労働者を製造業にも認め、労働者を消耗品にした。大企業を栄えさせ、その利潤の一部を政治にキックバックさせる弱肉強食推進の政策は短期的には株価にプラスの影響を与えるが、中長期には全く逆の効果をもたらす。
確かに、弱肉強食政策を取り、労働者に十分な賃金を支払わなければ作った商品を買う人がいなくなってしまう。結婚しない、できない人が増えて人口が減っていくことも労働者の再生産ができないという深刻な問題である。急激な経済成長ができなくなった、成熟社会日本は緩やかな成長を模索しなければならず、大企業は労働者を派遣化し、賃金を抑え込んで利益を上げようとしているが、それは購買層が貧困化することであり、目先の利益は上げられるかもしれないが、長い目で見ると自らの首を絞めていることになる。
本書の中で、彼が発行しているTRIレポート(「金利・為替・株価特報」)の宣伝もしている。
「日本の奈落」 植草一秀著 ビジネス社 2014年11月14日発行 1600円+税