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「若者よ マルクスを読もう」を読みました(3月17日)

「若者よ マルクスを読もう」を読みました(3月17日)_d0021786_5414317.jpgマルクスの著作について、石川氏がその要約、内田氏がその心髄を述べている本です。

「ユダヤ人問題に寄せて」では内田氏がどうしてユダヤ人が差別されるようになったのかを歴史的にひも解いてくれていて、目からうろこでした。次のように言っています。「反ユダヤ的な感情はヨーロッパ世界においてはごく自然なものでした。ユダヤ教から分派してキリスト教が生まれた。分派した者たちは、分派するだけの必然性があったことを主張。彼らがもともと属していた「母胎」が腐りきっていて使い物にならないことを主張。そして中世にヨーロッパ全土がキリスト教化し、反ユダヤ感情はヨーロッパ人の宗教感情の「基準」になった。何かキリスト教世界の結束を固める必要が出てくるごとに「いけにえ」としてユダヤ人たちを組織的に迫害してきた。「思想」ではなく「感情」である。」

ユダヤ人は中世以来の差別で土地所有が許されず、農業を営むことも、製造業を営むこともできなかった。そこで金融業を行うようになった。キリスト教では利息を取ることを禁止していた。近代市民社会におけるユダヤ人のありようは、決してユダヤ人自身が選んだものではない。非ユダヤ人たちがそのような生き方に追い込んで行った。

また内田氏は次のようにも言っています。
「社会の悪は社会全体に瀰漫している。その社会の全構成員が、それぞれの仕方でそれぞれ社会を「悪くする」動きに加担している。だから社会を住みよいものにしたいと望むなら、自分の外のどこかに「一般的な障害や拘束」や「周知の罪」や「公然たる抑圧の立場」を探すよりも、まずは自分自身を顧みて、自分自身が固有の仕方で隣人たちにとっての「障害・拘束」になってはいないか、「だれにも知られない罪」を犯してはいまいか、誰かにとっての「隠然たる抑圧の立場」に立ってはいまいかを問うところから始めるべきではないか。」

最後に感動的なことが書かれてあったので紹介します。
「なにものであるか」ではなく「なにをするか」で人間は決まるのである。
「自分のことを善良で有徳な人間であると思い込んでいる人の方が、むしろ卑劣な行為や利己的な行為をすることをためらわない。「現実的・歴史的に」ろくでもないことをする人間は「ろくでもない人間」である。」
「脳がどれほどすばらしいことを考えても、身体の方は脳についていけない。「生身が許すうちで最良のこと」を選び出して、「やれるところから、ぼちぼちと」やることだ。」

マルクスは19世紀の資本主義が成長しはじめ、その内包する矛盾が吹きだしていた時代を生きた人であり、21世紀の現代に彼の一言一句を当てはめようとすることは大きな間違いを犯すことになる。かれの言わんとしていたことは何なのか、その心髄を現代に適用することが大事だと思いました。若い人たちにはぜひ読んでほしい一冊です。

「若者よ マルクスを読もう」 内田樹・石川康弘著 かもがわ出版 2010年6月20日発行 1500円
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by irkutsk | 2015-03-17 05:41 | | Comments(0)