「母性」を読みました(9月25日)
遡ること11年前の台風の日、彼女たちを包んでいた幸福は、突如奪い去られてしまった。母の手記と娘の回想が交互に繰り返され、浮かび上がる真相。
母親は24歳で絵画教室の仲間・田所哲史と結婚する。そして田所の両親が用意してくれた家は、築25年の木造平屋で白い壁と緑の屋根、イギリスの片田舎にありそうなかわいらしい外観だった。結婚して半年後、妊娠し、女の子を出産。この家は母親の家に近くバスで30分程度の距離にあった。おばあちゃんはよくやって来て、娘や孫との幸せな時間を過ごしていた。
その幸せな生活を一変させたのが台風だった。夫は夜勤で、台風が近づいているからと早めに出勤し、うちにはおばあちゃんと母親と6歳の娘の3人が残っていた。そして土砂崩れ起こり、家が潰される。おばあちゃんの寝ている部屋に娘も一緒に寝ていて、母親が駆けつけたとき、おばあちゃんはタンスに押しつぶされそうになりながらも、孫をかばっていた。そして孫を助けるように叫ぶのだった。母親は「あなたを産んで、お母さんは本当に幸せだった。ありがとう、ね。あなたの愛を今度はあの子に、愛能う限り、大切に育ててあげて」という最後の言葉を残し亡くなったのだった。
家が台風でなくなり、夫の実家に同居することになり、それからこの家族の不幸が始まるのだった。田所の母は人をほめるということがなく、何かにつけて欠点をあげつらい嫌味を言うのだった。そして嫁を使用人のようにこき使い、自分の娘たちには甘い。
そんな生活に娘もだんだん大きくなって、切れそうになり、おばあさんに口答えするようになる。ところがそうすることによって、しっぺ返しが母親に返ってくるという現実に悩む。そんな娘が台風の夜のことを父親の浮気相手に聞かされる。
非常に重い、そして暗い小説でした。
「母性」 湊かなえ著 新潮文庫 2015年7月1日発行 590円+税