「沈みゆく大国アメリカ<逃げきれ 日本の医療>」を読みました(9月29日)
そこでオバマ政権は全国民に医療保険に入ることを義務付け、違反すると罰金を払わなければならないとする「オバマケア」を導入した。保険料が払えない人には政府が補助をするという一見いい制度に見えるが、結果は全くひどいものだった。
保険会社は保険料を値上げするし、保険で受けられる治療には制限があり、いい治療は高額の保険に入っていなければ受けられない。しかも薬価は政府が決めるのではなく、製薬会社が自由に設定できるようになっている。さらに保険には免責額があり、一定の額までは本人負担となっている。町医者も保険請求の書類作成や治療内容が保険で出るかどうかを保険会社に問い合わせなければならなくなり仕事量が増えてきた。
アメリカは日本の医療制度をアメリカのようにし、アメリカ資本の保険会社が日本で儲けられるようにするために様々な要求を日本に出している。混合診療(保険診療と自由診療を患者が選べる)や新薬の安全審査のスピードアップ(現在アメリカが最も速い)、薬価の自由化など。
これらのアメリカの要求がすべて実現されれば、皆保険制度が残ったとしても、保険で受けられる治療は最低限の治療で、最新の高度な治療を受けようと思えば予め民間の医療保険に入っていなければならなくなる。
TPPの決着が取りざたされているが、医療分野にも大きな影響が出てくるのは必至である。
アメリカの「オバマケア」の正体がよくわかり、アメリカの強欲資本主義が日本の医療分野に進出し、日本の皆保険制度を壊そうとしているということがよくわかる本でした。
「沈みゆく大国アメリカ<逃げきれ 日本の医療>」 堤未果著 集英社新書 2015年5月20日発行 740円+税