「永い言い訳」を読みました(1月20日)
主人公・衣笠幸夫(きぬがささちお)は同じ名前の広島カープの衣笠祥雄(きぬがささちお)と同姓同名であるということで、父親を恨んでいた。
大学で同じ外国語のクラスを選択した夏子と知り合いになるが、彼女は後期の授業が始まっても姿を見せなかった。そして3年後の初夏、大学4年になった幸夫は就職活動の面接が終わった帰り道、美容室に寄ったがそこで夏子と再会する。彼女は父親がなくなって、大学を辞めた後、美容学校に通い資格を取ったという。
幸夫は大学を卒業した後、出版社に入り、週刊誌の女性グラビアページを担当していたが、4年ほど勤めた後に辞表を提出し、退路を断って夢であった小説家を目指す。そしてその間の生活は夏子が支えていた。いわゆる髪結いの亭主状態だった。
やがて幸夫の作品は売れるようになり、ペンネームの津村啓は有名になっていった。そして夏子と知り合ってから20年後のある日、妻の夏子は友達のゆきと二人で申し込んでおいたスキーツアーに行くために夜の9時半に家を出た。幸夫は妻の留守をいいことに女性編集者をうちに連れ込んで浮気していた。ところが山形県警からスキーバスがカーブを曲がり切れずに湖に転落したという連絡が入った。
妻の夏子が亡くなったというのにその実感はなく、妻を亡くして悲しみにくれる夫を演じることしかできない幸夫だった。夏子と一緒にスキーツアーに参加したゆきの夫・大宮陽一は遺族説明会で糞を投げつけるゴリラみたいに大声を出して怒っていた。
その大宮には小学6年生の真平と6歳の保育園児・灯がいた。ひょんなことから幸夫は真平が中学受験に向けて週2回塾に通っているとき、灯を保育園に迎えに行き彼女の面倒を見ていてやるという約束を大宮とする。子どものいない幸夫にとって最初はぎこちなかったが、だんだん二人も幸夫に慣れてきて、幸夫も二人が可愛くなってきた。
そして10月の運動会のあと、大宮の家で鍋パーティをやることになっていたが、そこに科学館のサイエンスショーをやっていた鏑木優子がやって来た。幸夫は彼女が来ることは聞かされてなく、腹を立てて帰っていく。そして真平が塾に行く日に灯の面倒を見るのもやめてしまう。
そして12月大宮陽一は山梨県でデリヘル嬢にけがをさせて、幸夫に助けを求めて来る。
幸夫はこれらのことを通じてようやく夏子のことを書く気になる。
この小説は映画化され、2016年秋に公開されます。
「永い言い訳」 西川美和著 文芸春秋 2015年2月15日発行 1600円+税