「東京プリズン」を読みました(3月21日)
真理は教育的配慮で一級下の9年生に編入された。そして11月1日に16歳になった真理に校長先生は元の学年に戻れる条件として、次のような提案をしてきた。日本について全校生徒の前で発表して、それを「アメリカ政府」その他の単位に変えようというものだった。
しかし、その準備は遅々として進まず、12月中旬、「アメリカ政府」の授業の教師、スペンサー先生から呼び出され、どんなことを考えているかを聞かれる。真理は「能や歌舞伎のことを発表しようと考えています」と答えるが、先生は「これは社会科学授業だ。現代アメリカ人にとって最も興味があるのは真珠湾攻撃から天皇の降伏までだ」と言う。
そしてちっとも進まない真理の準備にしびれを切らしたスペンサー先生は、ディベート形式で発表を行うことにした。論題は「日本の天皇には第二次世界大戦の戦争責任がある」。真理は肯定側を担当することになる。
戦後、戦争責任をうやむやにしてきた日本。かつての戦争を推進した人たちが平然と権力の座につき、「鬼畜米英」と国民に教え込み、敵性語として英語の使用まで禁止した人たちが、手のひらを返したようにアメリカのご機嫌取りに奔走し、アメリカを唯一の同盟国とみなし、アメリカ文化を大量に受け入れ、国民もまるでアメリカとはずっと前から親密な同盟国であったかのようにアメリカ文化に傾倒していく。
そんな中で天皇とは日本人にとって何なのか。それを突き止めようとした一冊であるが、わからない。天皇がもし戦争をおこし、継続させた最高責任者として処刑されていたら、日本人の心はどうなったのか?天皇制について考えさせられる小説でした。
「東京プリズン」赤坂真理著 川出書房新社 2012年7月24日発行 1800円+税