「下流老人」を読みました(6月1日)
下流老人の3つの指標として著者は次のものを挙げている。「収入が少ない」、「十分な貯蓄がない」、「頼れる人間がいない」。
現在は下流老人ではなくても、いつ下流老人になるかもしれない。病気や事故による支出(自分たち夫婦だけでなく子供や孫を含めた家族の)、人生における高齢期の長期化などが下流化を促す。年を取ったら年金でと考えていても、その年金が減らされている。しかも支給年齢の引き上げまでも考えられている。
年を取ったら、子どもの世話にならずに老人ホームへ入ると思っていても、要介護高齢者のための特別養護老人ホームは入所までに3~5年待ちの状態、有料老人ホームは入所金が2000万円、月々の支払いが15~30万円という高額でとても年金では賄えない。
どうしてこんな状況になってしまったのか?根本には富の一極集中と社会福祉制度の不備があると思われる。政府はさかんに自己責任論を唱え、高齢者は家族で面倒を見るようにと言っているが、現在の日本の経済状況からすれば、もっと充実した社会福祉政策が行えるはずである。それには一極に集中した富を税金という形で吐き出させ、それを原資として所得の再配分を行うべきである。国は1000兆円を超える借金を抱えているというのに、大企業は最高益を上げ、内部留保がますます膨らんでいる。
社会福祉が近年どんどん切り下げられているのは、1990年のソ連崩壊も影響しているのではないか。かつて資本主義国は社会主義国の福祉政策を一定程度取り入れざるを得なかったが、ソ連崩壊により資本主義はそういう配慮をする必要がなくなり、日本でも労働者は長時間労働、派遣労働など劣悪な労働環境を強いられるようになった。
現在の若者が老人になったとき、下流老人問題は一層深刻化し、その生存さえ脅かされかねなくなるだろう。そうならないためにも今の強欲資本主義を終わらせる必要がある。
「下流老人」 藤田孝典著 朝日新書 2015年6月12日発行 760円