「原発プロパガンダ」を読みました(6月23日)
1965年原発関係の広告費は6億円だったのに、事故やトラブルが発生するたびに広告費は増えていき、89年には200億円を突破した。平時における広告は、原発政策はバラ色だと宣伝し、事故など有事の際には出稿引き上げなどをちらつかせ、メディアに報道自粛を迫る。つまり国民に対しては原発政策支持者を増やすための「欺瞞」を、メディアに対しては真実を報道させないための「恫喝」を行っている。
1996年の巻原発住民投票の際にはわずか3カ月の間に東北電力、資源エネルギー庁、経産省、J-POWERは250段(全面広告は12段)の広告を出稿した。しかし新潟日報は賛成・反対に厳格なまでに中立を保ち、その結果原発誘致は否決された。
2000年以降は東電・電事連・NUMO(原子力発電環境整備機構)の三本柱で、それぞれ担当分野を決め、意識的にニュース番組を提供した。また有名タレントを起用してきた。勝間和代、星野仙一、草野仁、玉木宏、北村靖男、岡江久美子、渡瀬恒彦、江口ともみ、などなど。
福島原発事故が起こると、まるで戦争に敗れた国が大慌てで戦争犯罪記録を焼却するがごとく、それまでの原発PR広告はネット上からも削除されてしまった。
ところが事故後3年、電事連はメジャー雑誌「新潮」に広告を出稿した。原発が停止し、割高な原油を購入しなければならなくなったが、これは膨大な国富の流出であるといった内容である。ゲストにはデーモン小暮、手嶋龍一、舞の海秀平、宮家邦彦が出ているが、記事では本人が語っているように見せているが、原稿は広告主が書いている。
また安全神話が崩れた今、次は安心神話が作られている。原発事故の影響を極力矮小化し、「事故で放出された放射能の危険性は小さく、健康への悪影響はない」という神話である。また風評被害対策としても安心プロパガンダが国によって行われている。
再稼働を目指す電力各社は、2015年になってから一気に「安全PR」に力を入れ始めた。
これらのプロパガンダに抗するために私たちはどうすればいいか。著者次のように言っている。
1、日々目の前に流れているニュースを軽々に信用しない。一人ひとりが自分の頭で考えること。
2、ツイッターなどのネットワークを活用してプロパガンダメディアに属さない独立系メディアの情報に耳を傾け、支えること。
Our Planet TV
IWJ
マイニュースジャパン
マガジン9
8bitnews
ニュース オブ エド
原子力資料室
グリンピース・ジャパン
3、原子力ムラがスポンサードしているような広告を見聞きしたら、それを掲載しているメディアに必ず抗議の一報を入れること。
資金を持っている政府や大企業は凄まじい量のPRで国民の意識を麻痺させようとしている。
「おわりに」の中で著者は次のように書いている。
「広告とは、見る人に夢を与え、企業と生活者の架け橋となって、豊かな文明社会を創る役に立つ存在だったはずだ。それがいつの間にか、権力や巨大資本が人々をだます方策に成り下がり、さらには報道をも捻じ曲げるような、巨大な権力補完装置になっていた。そしてその最も醜悪な例が原発広告(プロパガンダ)であった。
プロパガンダというのは恐ろしいものだ。国や電力会社は私たちが払う税金や電気料金でこれらのプロパガンダを強力に推し進め、国民を騙しているという実態に驚愕した。
「原発プロパガンダ」 本間龍著 岩波新書1601 2016年4月20日発行 820円+税