「スタフ」を読みました(8月6日)
月水金は西新宿の外れにある月極駐車場を無料で貸してもらい、火木土は高田馬場にある私営塾の駐車場で営業している。これらの場所を探してくれたのは同居しているパソコンおたくの中学生で甥の・智弥だった。智哉の母=夏樹の姉・冬花は看護師で、パプアニューギニアで小児医療に携わっている。長崎の祖父母のところに預けられるはずだったが、智弥がその町に光通信がないからいやだと言い、叔母の夏樹と住むことになった。
そんなある日、夏樹は保健所の方から来たという男に誘拐され、中学生アイドル・カグヤの住むマンションに連れて行かれる。そこにはカグヤと彼女のファン4人がいた。彼らはカグヤの姉で有名な女優・寺田桃李子が近々医療福祉施設の経営を手がける社長と結婚することになっているという。桃李子は昔、売れていなかったとき、大手広告代理店の営業マン・山内から声をかけられ、ユニットを組んでいた杏子と共に彼の言いなりになって身体を差し出すことになった。そのときに杏子と桃李子との間で交わされたメールを消してもらうために杏子に連絡をしたが、断られた。そこで誘拐したということだったが、彼らは同じ場所で別の曜日にランチワゴン車で営業している杏子と間違えて夏樹を誘拐してしまったのだった。
ところがこの件に関して夏樹もカグヤに協力していくことになるのだが……。
(ここからはネタバレです)
最後まで読み終わり、結局、全てを仕組んだのは智弥だったことがわかった。彼は母親と一緒に日本で暮らしたかった。そのためにいろいろと策を弄して母親が日本へ帰ってくるように仕組んだのだった。一面から見ると彼はたとえ中学生だったにしろ、多くの人たちを振り回し、自分の欲望を実現する手段として使ったエゴイストである。母親に自分の気持ちを素直に告げられない弱さを持っていたのだと思う。
大山鳴動、鼠一匹という読後感でした。
「スタフ」 道尾秀介著 文義春秋 2016年7月15日発行 1600円+税