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「犬が星見た」を読みました(10月3日)

「犬が星見た」を読みました(10月3日)_d0021786_16161814.jpg高山なおみが「ロシア日記」(8月13日のブログで紹介)の中で、武田百合子の「犬が星見た」を読んでロシア、ウズベキスタンへ行きたくなったというのを読んで、私も読んでみることにした。

1969年6月10日出発のF旅行社企画の「69年白夜祭とシルクロードの旅」に武田泰淳と竹内好、武田の妻・百合子は参加した。参加者は添乗員の山口氏を入れて10名。東京組は3人で、あとは関西からの参加者で80歳になる錢高組の会長(本の中では錢高老人と呼ばれている)もいた。

私も1972年に「18日間ロシア文学の旅」というのに参加し、当時のソ連を回って来たので、この本を読むと当時のソ連の様子を懐かしく思い出すことができる。1ドル360円、1ルーブル400円の時代で、ソ連には外国人専用の外貨ショップ「ベリョースカ」があった時代のことである。

横浜港の大桟橋からハバロフスク号は昼に出発し、日本列島を北上し、津軽海峡を抜け、日本海を通ってナホトカへ。当時ウラジオストクは閉鎖都市で外国人の立ち入りは制限されていた。

武田泰淳らも船でナホトカへ行き、ハバロフスクまで列車で移動、そこから飛行機でイルクーツクへ。イルクーツクで飛行機を乗り換えノボシビルスクへ。ところが飛行機が遅れて、アルマ・アタ見学はなくなり、休憩だけでタシケントへ行くことになった。武田泰淳はたいそう不満だったが、百合子に不満を漏らすだけだった。

武田氏と竹内氏は旅行の間中、よく酒を飲んでいる。コニャックやワイン、ウォッカ、シャンペンなどなど。ビール(当時のソ連のビールはビールといえないような代物だった)はまずくてあまり飲まなかったようだ。

銭高老人の「ロッシャはえらい国じゃ」という口癖がよく出てきて、思わずそのシーンを想像してしまう。

ウズベキスタン(首都のタシケント・サマルカンド・ブハラ)、グルジア(首都のトビリシ)を経てヤルタに行き、黒海で武田氏は泳いでいる。その後、レニングラードへ行き、白夜を体験し、モスクワへ行く。このツアーはモスクワで解散となり、武田氏ら3人はこの後、スウェーデン(ストックホルム)へ行き、デンマークのコペンハーゲンへ行く。そこで武田氏と竹内氏はポルノ雑誌を買い、どうやって日本へ持ち込むか頭を悩ますことに。7月4日、日本航空の飛行機で3人はアンカレッジ経由で帰国する(当時、シベリア上空は外国の航空会社には開放されていなかった)のだが、機内でも「スパシーバ」(ありがとう)、「パジャールスタ」(どういたしまして)と言いながら二人は飲み交わしていた。

「連れて行ってやるんだから、日記をつけるんだぞ」と夫・武田泰淳に言われてつけた日記がこの「犬が星見た」である。武田、竹内のおもしろいやり取り、銭高老人の言葉、そして百合子自身が書き留めたいと思ったことを書き留めたこの日記は、3人の旅行がいかにおもしろく、楽しいものであったかが想像できる名作である。また当時のソ連旅行事情もこの本で知ることができる。現在の便利になったロシア旅行とは違った、驚きが満載の旅行である。

「犬が星見た」 武田百合子著 中公文庫 1982年1月10日発行 724円+税
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by irkutsk | 2016-10-03 16:14 | | Comments(0)