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「お父さんと伊藤さん」を読みました(12月26日)

「お父さんと伊藤さん」を読みました(12月26日)_d0021786_536488.jpg映画を見に行けなかったので原作を読むことにしました。

私こと彩は34歳。現在駅前の本屋でアルバイトをしている。同居している伊藤さんは54歳で学校の給食調理補助員をしている。二人で暮らし始めて1年と少し。

8月下旬のある日、兄から電話があり、会って相談したいことがあるという。新宿のパーラーで兄が切り出したのは父と一緒に住んでくれないかという話だった。小学6年生の息子が中学受験だし、妻の理々子が精神的に不安定になっている。今すぐじゃなくて9月中にでもという話だった。そして伊藤さんにお土産の今川焼を買って帰ると、そこには伊藤さんだけではなく、父がいた。キッチンに4畳ほどのダイニング、それに6畳と4畳半の和室のあるアパートで、父は四畳半の部屋でいいと言って、自分のボストンバックと30センチ四方の白い段ボール箱を置いた。私たちは荷物を6畳の部屋に移し、74歳の父との3人暮らしが始まった。

しかし11月のある日、父は「しばらく出かける」というメモを残していなくなっていた。父の部屋をのぞくと黒いボストンバックと四角い白い段ボール箱がなくなっていた。

父はいったいどこへ行ったのか。そしてあの白い箱には何が入っていたのか。

「存在の耐えられない軽さ」という映画があったが、親の面倒を見るということは「存在の耐えられない重さ」とでもいうものかもしれない。映画の予告編では喜劇かと思っていたが、なかなかに深刻な老人問題を扱った本だった。

「お父さんと伊藤さん」 中澤日菜子著 講談社文庫 2016年8月10日発行 740円+税
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by irkutsk | 2016-12-26 05:33 | | Comments(0)