「お父さんと伊藤さん」を見に行きました(2月18日)
彩(上野樹里)は34歳。現在駅前の本屋でアルバイトをしている。同居している伊藤さんは54歳で学校の給食調理補助員をしている。二人は以前働いていたコンビニで知り合い、二人で暮らし始めて一年と少し。
8月下旬のある日、兄から電話があり、会って相談したいことがあるという。新宿のパーラーで兄が切り出したのは父と一緒に住んでくれないかという話だった。小学6年生の息子が中学受験だし、妻の理々子が精神的に不安定になっている。今すぐじゃなくて9月中にでもという話だった。そして家に帰ると、そこには伊藤さんだけではなく、父がいた。キッチンに4畳ほどのダイニング、それに6畳と4畳半の和室のあるアパートで、父は四畳半の部屋でいいと言って、自分のボストンバックと30センチ四方の段ボール箱を置いた。私たちは荷物を6畳の部屋に移し、74歳の父との3人暮らしが始まった。
しかし11月のある日、父は「しばらく出かける」というメモを残していなくなっていた。父の部屋をのぞくと黒いボストンバックと四角い段ボール箱がなくなっていた。
父はいったいどこへ行ったのか。そしてあの箱には何が入っていたのか。
携帯のGPS機能でお父さんの居所を突き止めた伊藤さんは、彩たち兄弟をレンタカーに乗せて父のもとへ行く。父がいたのは父の生家で庭には大きな柿の木があった。伊藤さんは「一晩3人で話し合ってみたら? 明日の朝迎えに来るから」と言って帰っていった。
翌日、結論も出ないままちっともやってこない伊藤さんを待っていたが、爆弾低気圧の通過で土砂降りの雨になり、雷も。そして庭の柿の木に雷が落ち、木が燃えはじめ、枝が折れて、火がうちに燃え移り家は焼けてしまった。
お父さんは有料老人ホームに行くことにしたと言って、彩たちのアパートを出て行った。
彩たちのお父さんは有料老人ホームに入れるだけのお金を持っていたから、そういう選択肢を選ぶことができたが、そうでなければ彩たちと住むほかはなかったのではないだろうか。現代の多くの家族が抱える老親問題をコミカルに描いているが、なかなかに考えさせられる映画だった。
「お父さんと伊藤さん」 2016年日本 119分 監督:タナダユキ 出演:上野樹里、リリー・フランキー、藤竜也、長谷川朝晴、安藤聖ほか 原作中澤日菜子
「お父さんと伊藤さん」公式サイト