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「海よりもまだ深く」を読みました(3月26日)

「海よりもまだ深く」を読みました(3月26日)_d0021786_16381125.jpg15年前に島尾敏雄文学賞を取ったきりの自称作家の良太。だが、その後15年は鳴かず飛ばずで、今では「小説の取材」と言い訳をしながら、探偵事務所で働いている。

出版社からは漫画の原作をやらないかと勧められてはいたが、純文学作家のプライドから二の足を踏んでいたのだった。そのくせギャンブルには目がなく、少し稼ぎがあればそこにつぎ込むばかりでいつも金欠状態であり、母親の淑子や姉の千奈津に金をせびる毎日を送っていた。

そんな彼に愛想を尽かした妻の響子は離婚して久しく、月に一度、一人息子の真吾と会わせることと引き換えに養育費5万円を求めるほかは、一緒に食事することすら拒んでいた。だがそんな良多にも父親としての意地があり、真吾に会う時、養育費は用意できなくても金を都合してプレゼントは用意していた。

現実を見ようとしない良太に愛想をつかし、出て行った元妻。父親に似ることを恐れる真面目な11歳の息子。そして46歳の良太を未だ「大器晩成」とやさしく見守る母親。

台風が日本に接近しているある日、良多は月に一度の息子と会える日を持った。響子は、元夫である彼が、自分の新しい恋人のことを調査していることに呆れ、冷たい態度を崩さない。それでも天気の崩れかたを危ぶみ、親子三人、淑子のアパートで一夜を過ごすこととなった。父親を心配して調子を合わせる真吾は、眠れずに父と一緒に嵐の中を外出、公園の滑り台に籠って駄菓子を味わう。戯れに話し込む親子は、将来の夢について言葉を交わす。考え込む良多は、翌日からの自分のことを振り返ってみるのだった。翌日、晴れ渡った空のもと団地を出る親子の姿があった。

2016年5月21日に是枝裕和監督、阿部寛主演で映画が公開されている。

「海よりもまだ深く」 是枝裕和、佐野晶著 幻冬舎文庫 2016年4月30日発行 540円+税
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by irkutsk | 2017-03-26 22:00 | | Comments(0)